研究課題/領域番号 |
16K06253
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
石居 正典 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 物理計測標準研究部門, 主任研究員 (50356432)
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研究分担者 |
木下 基 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 物理計測標準研究部門, 主任研究員 (00415671)
加藤 悠人 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 物理計測標準研究部門, 研究員 (70635820)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 電磁界測定 / 磁界センサ / ラビ周波数 / セシウム |
研究実績の概要 |
本研究では、原子の構造と基礎物理定数に基づいた量子現象を利用する、次世代型電磁界センサの実現に関する研究を行っている。なお、ここでは特に磁界と原子の相互作用を利用するため、磁界センサについて検討している。 これまで、申請者ら自身が実施してきた先行研究では、ホーンアンテナから放射する空間中の磁界に対し、量子現象を利用した磁界センサの実現可能性の検証を行い成功してきた。本研究では、セシウムの気体原子を封入したガラスセルにレーザー光と測定対象である磁界を同時に照射するが、これまでは測定対象となる磁界に位相変調を加えてパラメトリック励振を起こすことで、観測対象とある二重共鳴スペクトルの挙動を解析して、系の固有振動周波数を測定して磁界強度を決定する等価的な方法で検証を行ってきた。一方、本研究事業では、これまでの測定システムを改良及び応用し、測定対象である磁界ではなく、その測定に使用するレーザー光に振幅変調を加えたシステムの検証実験と実現の可能性を検証した。またさらに、測定の空間分解能の検討として、ガラスセルに対して、被測定磁界の他にポンプ光となるレーザー光とプローブ光となるレーザー光の2つのレーザー光を照射し、2つのレーザー光の交点の大きさを空間分解能とした測定システムの構築が可能であるかについての実験的な検証も行い、こちらの実現の可能性も確認した。 またさらに、電磁界シミュレータを使用して、ガラス製セルの被測定磁界に対する侵襲性の検証や、今後さらに低侵襲性の磁界センサを研究開発する際に必要となるガラス製セルの形状、大きさ、ガラス厚に関する設計指針を検討した。この際、計算結果に関する妥当性の検証も行った。 今年度は、本研究課題の研究成果に関連した、国際会議での発表を2件、国内学会での発表を1件、プレスリリースを1件、国際誌への論文の掲載を1件も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、先行研究において等価的な検討として行っていた様に、被測定磁界に対して変調を加えてしまう測定システムではなく、磁界の測定に使用するレーザー光側にのみに変調などの作用をさせて測定する手法や、空間分解能の向上に関する実験的な検討などを行うことができた。今年度実施したこれらの検討は、やや周辺技術に関する検討ではあるが、今後の研究では避けては通れない検討事項の検証であり、それらの実現可能性の確認をする事ができた。また、電磁界シミュレータを使用したガラス製セルの被測定磁界に対する侵襲性の検証についても、設計指針まで検討する事ができた。
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今後の研究の推進方策 |
MHz帯で動作する量子現象を用いた次世代型磁界センサの実現のため、MHz帯の磁界に対して理論的に原子の吸収スペクトルの観測が可能な、低いエネルギー遷移領域を検討して決定する。先行研究では、超微細構造準位のF3とF4の間の準位を利用して約9.2 GHzの周波数の磁界を観測していたが、MHz帯で対応可能な、より低いエネルギー遷移領域が存在すると考えられるゼーマン副準位を利用する事での吸収スペクトルの観測を目指す。 また、次年度も本研究課題の研究成果を、学会などにおいて積極的に発表等を継続する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、一部の設備の製作に当たっては、業者に何度か試作を依頼して設計を行う予定であったが、予想よりも予算がオーバーすることが分かった。そのため、予算を有効活用するために、可能な物については、できるだけ直接部材を調達して自ら試作を行う方式に変更したためである。また、部材の調達に際しても、見積もり競争を行った結果、安価に調達することもできたため。
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次年度使用額の使用計画 |
前年度に購入や試作した設備でも、さらに追加、改良や仕様変更などが必要である部材もある。 これらの追加、変更、改良による試作及び設計の他、学会参加などでの本研究の成果の発表や関連研究の調査のための旅費にも使用する計画である。
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