研究課題/領域番号 |
16K06254
|
研究機関 | 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構職業能力開発総合大学校(能力開発院、基盤整備センター) |
研究代表者 |
荒 隆裕 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構職業能力開発総合大学校(能力開発院、基盤整備センター), 能力開発院, 名誉教授 (40648896)
|
研究分担者 |
山本 修 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構職業能力開発総合大学校(能力開発院、基盤整備センター), 能力開発院, 教授 (00648925)
田中 晃 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構職業能力開発総合大学校(能力開発院、基盤整備センター), 能力開発院, 准教授 (30648952)
平原 英明 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構職業能力開発総合大学校(能力開発院、基盤整備センター), 能力開発院, 助教 (50649209)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 誘導電動機 / 等価回路 / パラメータ測定 / 損失分離 / 無負荷試験 / 空間高調波 / 高精度 |
研究実績の概要 |
回転子回路の周波数依存性と漏れリアクタンスの非線形性の両方を合理的に考慮できる誘導機の等価回路モデルとその回路パラメータ決定法を確立させた。具体的には、提案等価回路モデルが誘導機で想定される4つの回転子スロット構成(半閉普通かご形、半閉二重かご形、全閉普通かご形、全閉二重かご形)の全てに「共通して適用できる」ことを5.5kWの供試誘導電動機に対する実機実験に基づいて明らかにすることができた。拘束試験時の電流設定のばらつきを抑制するスムージング処理という新たなアイデアを導入することによって、実用に供することができる手法として確立できたと考えている。また、等価回路モデルパラメータは従来型の無負荷試験と拘束試験に基づいて決定できることから、商用規格に適した高精度等価回路パラメータ決定法として有効であると考えている。 提案する新無負荷試験(空間高調波磁束による負のトルクに起因した損失を分離して測定可能な無負荷試験法)がインバータ駆動誘導電動機にも適用できることを明らかにした。具体的には、0.4kWの供試誘導電動機に対して従来の正弦波駆動と今回のインバータ駆動の双方による新無負荷試験を行える実験システムを構築した。正弦波駆動時とインバータ駆動時の新無負荷試験を実施し、空間高調波磁束による負のトルクに起因した損失は両試験で同一の数値結果を得ることから、提案法がインバータ駆動機にも適用できることを確認することができた。 さらに、当初計画とは異なる切り口の標準試験法として、一次磁束鎖交数ベクトル演算に基づくトルク推定手段に着眼し、これに鉄損、機械損、漂遊損を加味することで、トルク検出器を用いた実負荷試験に匹敵する精度でモータトルクを推定する新たな手法を構築し、正弦波、方形波、パルス幅変調(PWM)インバータ駆動の何れにおいても高精度ななトルク推定が可能であることを実証することができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
回転子回路の周波数依存性と漏れリアクタンスの非線形性を考慮した誘導電動機の等価回路モデルの研究課題に関しては、当初の計画以上に進展させることができた。特に、かご形誘導電動機で想定される4つの回転子スロット構成に対して、前述の周波数依存性と非線形性の双方を共通の等価回路モデルで考慮できる手段を開発できた意義は大きいと考えている。 また、無負荷試験と拘束試験とは異なる試験法アプローチとして、トルク検出器を用いずに電圧電流の波形測定から極めて高精度に実負荷運転時のトルクを推定する研究課題に着眼し一定の成果を得たことも、当初の計画以上に研究を進展させることができた事項である。 一方、新無負荷試験法の研究課題に関しては、電動機―原動機システムの構築に対して想定以上に時間を要したことや、新無負荷試験によって分離される空間高調波磁束による負のトルクに起因した損失を、従来型無負荷試験法によって分離測定する検証実験を実施できていないことから、やや遅れていると考えている。しかし、その一方で、文献調査を通じて現状技術の問題点の抽出や時間高調波と空間高調波が発生源となる銅損、鉄損、機械損、漂遊損の要因分析等については順調に進み新たな知見も得ていることから、今後、空間高調波磁束による負のトルクに起因した損失を合理的に考慮できる新たな等価回路モデルを構築するための材料は揃ってきている。 これらを総合し、全体として総合すれば概ね順調に進んでいると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
新無負荷試験によって分離される空間高調波磁束による負のトルクに起因した損失を、従来型無負荷試験法によって分離測定する検証実験が急務である。極低周波における回転子回路インピーダンスの情報を利用して上記を分離測定する手段をとるため、インピーダンスの周波数依存性や非線形の正確な考慮が一つのキーポイントになると考えている。これについては、今年度確立できた「回転子回路の周波数依存性と漏れリアクタンスの非線形性の双方を考慮できる等価回路モデル」は高精度な分離測定に寄与できると考えている。 次に、空間高調波磁束による負のトルクに起因した損失を合理的に考慮できる新たな等価回路モデルの理論を醸成させて、同期速度付近の特性算定を正確に行うことに対する効果性を検証するまでを行う必要があると考えている。 トルク検出器によらない高精度トルク推定法については、中性点端子のない電動機に対する適用法の確立に加えて、永久磁石同期電動機に対する妥当性を検証する必要があると考えている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
高速域を含めた正確なトルク計測を行える電動機―原動機直結装置の導入を見直したことが理由である。 高速化とトルク計測の高精度化の双方を目指すと予算的な限界がある。現在までの研究進捗状況を勘案すると、高速域に主眼をおいたシステムではなく、むしろ商用周波数付近までの可変速域での正確なトルク測定が必要で、特にトルク脈動の発生が少ない電動機―原動機直結装置の導入が好ましい。よって、既存のパウダーブレーキ負荷と組み合わせることができる電動機―原動機直結装置の導入に活用することとしたい。
|