従来の光起電力効果と異なる強誘電体の分極に起因した光起電力効果がBiFeO3(BFO)において報告されており、新たな太陽電池として期待されている。そこで我々は有効なリーク電流抑制法として元素置換法に着目し、BiサイトにNdを置換したBFO系材料において光起電力特性の評価を行った。これまでは高価な単結晶Nb:STO基板上で下部電極としてSrRuO3を用いて、単結晶BNF膜を作製してきた。昨年度、安価なPt(111)/Ti/SiO2/Si基板(以降Pt/Si基板と略記)上にBi1.0Nd0.1Fe1.0O3(BNF) 酸化物薄膜及びPt上部電極をPulsed Laser Deposition法を用いて堆積することにより、薄膜型キャパシタ構造を作製した。そして、Nb:STO基板とPt/Si基板を用いた際のBNF薄膜光起電力セルを比較したところ、安価なPt/Si基板上でもNb:STO基板上とほぼ同等の特性が得られたことがわかった。 今年度は、Pt/BNF/Pt/Si構造での光起電力特性において、酸素欠損の影響を評価するため、各分極操作を行いアニーリング処理を施し、光起電力特性評価を行った。光起電力特性はアニーリング前後で大きく変化した。これはアニーリングを行うことで、BNF膜内の分極により酸素欠損が移動し、バンドに影響を与えたものと考えている。また、上向き分極状態でのアニーリングにより光起電力特性は改善し、Au/BNF/SRO/Nb:STO積層薄膜型セル構造の試料よりも優れた光起電力特性を得ることができた。 また、上記とほぼ同じ試料だが、上部電極のみをAuとした試料で、光起電力特性の膜厚依存性を調べた。その結果、一定の膜厚までは膜厚増加とともに光起電力特性が向上することが確認され、本試料の光起電力特性が強誘電体薄膜の電気分極に誘起された光起電力モデルと矛盾しないことを示した。
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