1. 最終年度では、その作製の中でも最も高温を必要とするゲート酸化Si(SiO2)膜の200℃以下の作製を主に検討した。SiO2 膜の堆積には、シリコーンオイル(SO)とオゾンガス(O3)による200℃以下での大気圧CVD法を用いた。膜中には、膜形成時の熱分解化学反応で生じたOH基が残留し、絶縁特性を著しく阻害するため、それをアニール処理による除去を試みた。通常のN2雰囲気アニール法では、400~450℃以上の温度が必要なため、還元作用の強いNH3 雰囲気を用いた。その結果、N2雰囲気に比べて同じ温度ならば約2倍以上の除去効果があることが分かった。しかし、温度を130から180℃に、処理時間を5分から1時間以上に、NH3 流用を0.1から0.4 lm(litter/min)と増加させても、OH成分の顕著な除去は見られず、その効果が飽和した。今後は、除去メカニズムを明らかにし、それに基づいた検討を行う。 また、前年度までの研究から、 2. Si結晶化を低温で促進する結晶化誘発層である多結晶YSZ膜のCNP膜上への堆積の検討では、YSZ膜堆積時のCNP膜へのプラズマや熱的損傷を低減するために、緩衝層として、CNP膜上に有機絶縁物Zeocoat膜と酸化Si (SiO2)膜を塗布した。さらに、CNPを形成したガラス基板と試料ホルダーとの接触に伴う熱抵抗を両者間に放熱グリスを塗布することで、低減した。その結果、CNPの損傷が殆ど無く、厚さ70nmの結晶化YSZ膜が堆積できた。 3. 当初、YSZ膜上にレーザーアニールにより結晶化Si膜の作製まで行う予定であったが、そこまでは至らなかった。ただ、これに関しては今までの実績を元にすれば、十分対応可能である。 以上、今後も引き続きCNP上への薄膜トランジスタの作製を検討していく予定である。
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