高配向カーボンナノチューブ(CNT)と樹脂の複合材料による高電気伝導・高熱伝導プラスティック材料開発の基盤技術を確立することを目的とし、研究を進めた。紡績CNTによる一方向配向CNTシートと樹脂シートをホットプレスにより複合化して一方向配向複合材料を作製した。ここで、紡績し得られるCNTウェブ積層数を変化させてCNTシート厚を制御し、複合化後のCNT濃度を制御した。従来の粉末状CNTによる複合材料では、均質な高濃度分散以外にも配向性やCNT結合性が乏しく、高伝導特性は得られていない。本研究で配列CNTシートプリフォームを用いている点が本研究の強みである。 本研究を通して、CNT体積充填率やCNT直径などを変化させた複合材料を作製評価し、一方向配向CNT樹脂複合材料の電気伝導特性、および熱伝導特性を調べた。その結果、CNTを体積濃度50%という高濃度に含むCNTエポキシ樹脂複合材料の作製を達成した。また、その電気伝導率と熱伝導率を評価し、それぞれ最大で700S/cm及び80W/mKと、複合材料としては極めて高い電気伝導特性及び熱伝導特性を示すことを明らかにした。一方、直径が24nm及び36nmの二種類のCNTについて作成した複合材料では、引張強度、ヤング率ともに直径が小さいほど大きくなることがわかった。以上の研究から、細いCNTを高濃度に充填するほど、複合材料中で効果的に電気輸送及び熱輸送が生じることが分かった。また、CNT/樹脂界面によるキャリアの散乱が複合材料全体の伝導特性に大きな影響を与えることが明らかとなった。
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