研究課題
本研究では高効率発光できる緑色、黄色、赤色InGaN長波長発光素子を実現するために必要な高品質InGaN発光層の結晶成長を目的として、有機金属気相エピタキシー(MOVPE)におけるNH3の分解促進によるInGaN結晶の高品質化を行った。InGaNは成長温度が600℃程度のInNと1050℃程度のGaNの混晶であるため、In組成制御と結晶品質の維持がトレードオフとなり品質劣化、発光効率の低下の要因である。具体的にはIn組成を大きく保つために成長温度を下げる必要があるが、それによりNH3の活性化・分解が抑制されるため、実効的なV/III比低下によるIn取り込み低下、欠陥導入が考えられる。本研究では成長基板を設置するウエハトレイに大きなギャップを設け、成長基板がウエハトレイに直接接触しない構造を取り入れた。これにより同じ基板温度に対して加熱ヒータおよびウエハトレイの温度が高くなることで炉内の周囲温度が高くなり、NH3が熱的に活性化されて実効的なV/IIIが向上しIn取り込みの向上や発光特性の改善がみられた。実際にピーク波長550nmで黄緑色発光するInGaN/GaN多重量子井戸構造を成長する場合に、ウエハトレイのギャップを従来の150umから1500umに拡大するとヒータの設定温度が700℃から800℃に上昇させることができる。その結果、構造的には原子間力顕微鏡によるモフォロジー、X線回折による界面急峻性が改善し、フォトルミネッセンスによる発光ピーク強度が5倍程度に向上し、発光半値幅も狭くなった。本研究は従来あるウエハトレイの設計変更の範囲で長波長InGaN発光層の発光強度が大幅に改善出来ることを明らかにした。今後更なる改善を進めることで、実用に耐えうる高効率InGaN長波長発光素子の実現に繋がると考えられる。
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Journal of Crystal Growth
巻: 509 ページ: 50~53
10.1016/j.jcrysgro.2018.12.007
巻: 508 ページ: 58~65
10.1016/j.jcrysgro.2018.12.028