研究課題/領域番号 |
16K06262
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
毎田 修 大阪大学, 工学研究科, 助教 (40346177)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ダイヤモンド / ワイドギャップ半導体 / 欠陥評価 |
研究実績の概要 |
前年度(H28年度)に実施した高感度非輻射型欠陥評価系の開発において試料温度の変化にともなう接合容量変化が測定精度に大きな影響をもつことが判明したため、本課題で構築している非輻射型欠陥評価系に特化した液体窒素フロー制御による高精度試料温度制御系の開発導入を行った。その結果、24時間以上の連続評価が可能となった。さらに、非輻射欠陥にトラップされたキャリアの熱励起放出による接合容量変化を観測するDLTS法による欠陥評価系の構築に着手した。 本評価系を用い、高温高圧合成基板(面方位(110)、オフセット角<110方向>5度)上に合成した4x10の17乗cm-3程度のホウ素濃度を有するp型ダイヤモンド半導体結晶の欠陥評価を行った。その結果、波長1030nm以下の励起光照射による過渡光容量変化を観測した。このことはダイヤモンド半導体結晶の価電子帯上端からエネルギー深さ約1.2eVの位置にアクセプタ型欠陥が存在していること示唆している。また、励起光照射直後の容量変化率(dC/dt)の評価から、上記アクセプタ型欠陥の光イオン化断面積が3.1x10の15乗cm2であることが明らかになった。 ダイヤモンド以外のワイドギャップ半導体結晶として4H-SiC結晶基板(面方位(0001)、オフセット角4度)上に合成した4.76x10の15乗cm-3の窒素濃度を有するn型4H-SiCショットキーデバイスを作製した。さらにその電気的特性評価を行い、整流比10の9乗以上、理想因子1.10の良好なダイオード特性が得られることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
非輻射型欠陥評価系の開発に関してはH28年度の研究実施によりその必要性が明らかになった試料温度制御系の導入を完了し、当初の測定分解能等の計画値を達成している。さらに開発した評価系を用いたダイヤモンド半導体結晶の非輻射型欠陥評価では価電子帯上端からエネルギー深さ約1.2eVの位置にアクセプタ型欠陥の存在を確認し、またその光イオン化断面積評価を完了したことからおおむね順調に研究が遂行できていると考えられる。一方、より浅いエネルギー領域に欠陥密度もしくは光イオン化断面積の小さい欠陥の存在が確認されたが、その詳細な検討には照射フォトン密度の向上が望まれる。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画に従い研究を進めるとともに、照射フォトン密度の向上を目指した励起光照射光学系の改良を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
DLTS法による欠陥評価系の構築においてH29年度は当初予定していた高速キャパシタンスメータを用いた評価系に代わり、より広範囲な周波数において評価が可能と考えられるロックインアンプ(既存設備)をもちいた評価系の構築の検討を行ったため、物品費に未使用額が生じた。 H30年度はH29年度に開発したDLTS評価系を用いた欠陥評価を検討し、動作速度の向上が必要な場合、ロックインアンプに替え、当初予定した高速キャパシタンスメータを用いた評価系の開発に必要な物品費として支出する。また、その必要がない場合は新たな検討事項として生じた照射フォトン密度の向上を目指した励起光照射光学系の改良に必要な物品費として支出する予定である。
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