研究課題/領域番号 |
16K06263
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
吉田 俊幸 島根大学, 総合理工学研究科, 助教 (50335551)
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研究分担者 |
藤田 恭久 島根大学, 総合理工学研究科, 教授 (10314618)
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研究期間 (年度) |
2016-10-21 – 2019-03-31
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キーワード | ZnO粒子層 / 低抵抗化 / 伝導メカニズム |
研究実績の概要 |
当研究では,まずガラス(石英)基板上にZnOナノ粒子層を形成し,半導体薄膜としての性能を評価することから始めている。昨年度までの結果より,スプレー法や蒸発乾燥法といった簡便な方法により,p型およびn型伝導を示すZnOナノ粒子層が形成可能であること,粒子層の伝導モードは通常のバルク伝導とは異なる可能性があることなどを示してきた。 当年度初めの問題点は,粒子層の抵抗が極めて高くTFT応用を目指す上で大きな支障となること,キャリア伝導メカニズムが解明されていないことなどであった。今年度はこれらの点にフォーカスして研究を進めた。 まず伝導メカニズムについては,温度可変ホール効果測定により,やはり通常のバルク伝導とは異なる温度依存性を示し,ホッピング伝導に似た振る舞いを示すことなどを明らかとした。これについては,粒子または粒子層表面のTEM観察,XPS評価などにより,焼結による粒子同士の結合部の原子構造評価や,粒子層および単結晶ZnO表面の化学的結合状態や組成比の評価を行い,バルクと粒子層の違いに照らしながら解析を進めている。 続いて抵抗値の低減化については,水分含有の効果やGa2O3粒子を用いたGaドーピング(n-ZnO粒子層)の効果について検討を行った。水分は,プロセス中および大気中の水分による架橋が電流パスとなり抵抗を減らす効果を示す可能性を見いだした。またGaドーピングについては結果が出始めたところで不明な点も多いが,数桁に及ぶ抵抗の低減化を確認した。今後メカニズムを詳細に検討していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
得られたZnOナノ粒子層の抵抗値がGΩ台やTΩ台と極めて高く実用化からかけ離れた値を示し,この低減化に多くの時間を費やしたため,当初計画より遅れている。現在,電極形成条件の検討や,概要でも触れているGaドープ(n型層)により,トップデータでkΩ台まで低減化できている。プロセス条件の最適化によっては,計画調書に示したsub-kΩ/sqの達成も可能と思われる。
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今後の研究の推進方策 |
引き続きガラス(石英)基板上へのZnOナノ粒子層の形成法の最適化について検討する。特にGa-ドーププロセスの最適化や抵抗低減のメカニズムの解明を進め,安定したZnOナノ粒子層を形成可能とし,以前試作したデプレッション型TFTの性能改善と,新たにエンハンスメント型TFTの試作を行う。エンハンスメント型TFTの試作そのものは比較的順調に行われると思われるが,その性能改善には,ZnO粒子層/絶縁膜界面の評価と特性向上が求められるため,困難が予想される。しかし,計画調書にも記したとおり,Si系およびInGaAs系MOSの研究で得た経験を活かして一つ一つ問題を解決しながら取り組んで行く所存である。またTFTの試作・改善と平行して,ガラス以外の基板材料上にもZnO粒子層を形成し,半導体薄膜としての性能評価を行い,本課題の大きな目的である基板材料の汎用化を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末の3月に設備利用のため,北大と北陸先端大学への出張を検討していたが,日程調整の結果,北大のみへの出張としたため,差額を次年度に回さざるを得なかった。これについては,改めて北陸先端大学での設備利用のための出張計画を立て,使用する予定である。
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