ZnOナノ粒子層をチャネルとする薄膜トランジスタ(TFT)の実現に向けた粒子層の形成と特性向上の為の調査・研究を行った。当初2018年度までとした事業期間を装置トラブルのために1年延長し,今年度まで行った。 本研究は,当研究室独自のガス中蒸発法により生成したZnOナノ粒子を,簡便なスプレー法によりガラス基板上に塗布して粒子層を形成し,その電気伝導特性およびTFTチャネル層への応用を検討するものである。ここでは粒子層の低抵抗化が喫緊の課題である。これは,生成直後のZnOナノ粒子を用いた粒子層のシート抵抗がM-Ohm~G-Ohmと極めて高く,TFT動作を確認したもののそれ以上の特性向上には大きな足かせとなるためである。 この問題に対して,本研究では生成したZnOナノ粒子に対して,n型ドーパントであるGaを不純物として導入し,キャリア濃度の向上と低抵抗化により解決を試みた。GaソースとしてGa2O3微粒子を用意し,生成したZnOナノ粒子と混合・熱処理を行う事によりGa原子をZnO粒子中に拡散させた。適切な条件によりGa原子がZnO粒子中に導入されることを確認し,シート抵抗はM-Ohm台からsub-k-Ohmまで劇的に減少し,最小値で225 Ohm/sqを得た。熱拡散によりZnOナノ粒子に不純物を導入する手法は他に見られず,画期的である。今後は条件の最適化や新たなソース原料の開拓等により,より高性能なZnO粒子層を得,TFTチャネル等へ応用することで半導体粒子プロセスの発展に貢献する。本研究の課題である半導体薄膜用基板材料の飛躍的な広範化への路を拓いた。
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