本研究では、パワーデバイス及び深紫外固体光源用材料として注目されているワイドギャップ半導体である酸化ガリウムに着目し、n型酸化ガリウム結晶膜の電気伝導性制御の実現を目的としている。パルスレーザー堆積法を用いて高品質n型酸化ガリウム結晶膜の成長技術を確立し、デバイス応用に向け、シリコンドーパントの化学組成・結合状態、電子状態を観測することにより、ドーピング機構を解明しようとしている。 平成28年度は、パルスレーザー堆積法を用いて、成長温度を500℃とし、ターゲット中のシリコン濃度を変化させ、シリコンドープ酸化ガリウム薄膜の成長を行った。作製された膜について、X線回折、エネルギー分散型X線分光法、二次イオン質量分析法、ホール測定法により評価を行った結果、膜中のシリコン濃度は、ターゲット中のシリコンの含有量を変えることにより、制御できることが分かった。平成29と30年度は、電気特性を改善させるため、ターゲット中のシリコン含有量を一定とし、基板温度(100~600℃)を変化させて調べた結果、結晶性及び電気特性が基板温度に強く依存していることが明らかになった。また、カソードルミネッセンス及び光電子分光法を用いて、酸化ガリウムの光学特性及び電子構造特性を明らかにすることにより、酸化ガリウムにおけるシリコンのドーピング機構に関する知見が得られた。さらに酸素ラジカル源による活性酸素を導入することにより、シリコンドープ酸化ガリウム薄膜の成長速度及び結晶性を向上させられることが分かった。これらの研究成果は、Applied Physics Letters等の国際論文誌に公表し、International Conference on Physics of Light-Matter Coupling in Nanostructuresなどの国際会議で招待講演を行い、研究成果を紹介した。
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