重イオン照射を用いて高温超伝導薄膜のab面方向に対して方向を制御した柱状欠陥を導入し,ab面方向の磁場に対する柱状欠陥のピン止め特性について調べた.ab面に対して±5deg.の小傾角で交差した柱状欠陥を導入すると,ab面に平行な磁場でのJcを大きく改善した.一方,ab面方向に対して傾斜した柱状欠陥は,その長さ方向の磁場では強いピン止めを示すが,磁場方向がab面方向に近づくにつれて急激にそのピン止め力は弱まり,ab面方向の磁場ではJcの増加は見られなくなった.以上は,ab面方向の磁場においても磁束ピン止めに対して柱状欠陥の交差効果が現れることを初めて実験的に明らかにしたものである.
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