研究課題/領域番号 |
16K06270
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研究機関 | 富山県立大学 |
研究代表者 |
松田 敏弘 富山県立大学, 工学部, 教授 (70326073)
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研究分担者 |
岩田 栄之 富山県立大学, 工学部, 准教授 (80223402)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 半導体 / 希土類 / 発光 / シリコン / MOS |
研究実績の概要 |
本研究では、大規模集積回路(LSI)と共存が可能な、赤・緑・青の3原色および紫外領域のシリコン系材料による電界発光素子の開発を目指して、希土類元素と添加物を導入したMOS構造によるEL発光素子に関する下記の研究を行った。希土類元素として主にTb、Ce、Gd、Pr等を導入したMOS型発光素子を作製し、物理的、電気的およびエレクトロルミネッセンス(EL)特性の解析を行った。 希土類元素の有機コート材をシリコン基板にスピンコートし、850~950℃の熱処理によって酸化膜を形成し、ITOをゲート電極とするMOS構造を作製した。今年度は、酸化膜に導入する希土類として、Tb、Gd、(Pr+Ce)および(Gd+Pr+Ce)について検討した。発光色の制御を目指し、配合する希土類元素を従来の2種類のから3種類に増やし、配合比および作製条件が発光特性に及ぼす影響について解析した。 まず、緑色の発光が確認されているTbコート液による発光素子について、スピンコート後の乾燥温度を検討した結果、これまでの120℃から300℃に変更することで、膜質が安定することが分かった。電流電圧特性については、EL発光強度は電流のべき関数となり、一定電流の下では発光強度が電圧の指数関数となることを示した。 また、Gd、(Pr+Ce)および(Gd+Pr+Ce) のコート液を用いた発光素子では、含有するそれぞれの希土類元素に対応する波長でピークを持つEL発光を確認した。中でも、Gdに起因する315 nm、Ceに起因する355 nmのピーク波長は紫外領域にある。(Gd+Pr+Ce) の3種類の希土類元素を添加した場合は、(Pr+Ce)の2元素の場合に比べて、355 nmのピーク強度が約2倍となることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
希土類を導入した酸化膜を持つMOS型発光素子について研究を進めた。希土類元素として主にTb、Gd、(Pr+Ce)および(Gd+Pr+Ce)等を導入したMOS型発光素子の作製条件の検討を行い、Tbではスピンコート後の乾燥温度を300℃にすることで、膜質が安定することを示した。Gd、(Pr+Ce)および(Gd+Pr+Ce)では、紫外領域のGdに起因する315 nm、Ceに起因する355 nmの波長でピークを持つEL発光を得た。 (Gd+Pr+Ce) の3種類の希土類元素を添加した場合は、(Pr+Ce)の2元素に比べて、355 nmのピーク強度が約2倍となることを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
ディスプレイへの応用も考慮して、引き続き発光色の制御の可能性について検討する。青色の発光を目指して、Gd、Tm等を中心に他の希土類元素との組み合わせ、紫外領域と青色での発光を検討する。さらに、これらの試料について、発光素子の酸化膜の表面からシリコン界面までのXPS、TEM等による物理的解析と、I-V特性等の電気的特性を行い、EL分光特性の結果も総合して、希土類イオンの励起・エネルギー遷移と発光機構を解析し、作製条件の最適化を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
シリコン系材料によるLSIと共存が可能な電界発光素子の開発を目指して、希土類元素と添加物を導入したMOS構造によるEL発光素子に関する研究を行ってきた。今年度、新たに3種類の希土類元素を導入した酸化膜を持つ素子の検討を行ったところ、紫外領域の発光強度の増加等の特性改善の可能性があることが分かった。それに必要な材料や機器については、既存のものを使用したため大きな費用は発生しなかった。今後、必要となるXPS、TEM等による物理解析等を行い、希土類元素を導入したMOS型発光素子の研究を進める。
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