研究課題
酸化物半導体は、大きなバンドギャップを有するため透明であるもののp型導電性が得られにくいため、オール酸化物半導体デバイスへの応用には制限があった。本課題は、p型導電性を有する酸化ニッケル(NiO)をベースに、他の酸化物半導体と組み合わせて、透明な太陽電池・センサ・トランジスタを簡便なスパッタリングで作製し、窓自身が発電した電力で窓表面に作りこまれたセンサ等が動作する『酸化物半導体を用いた発電機能を有するスマートウィンドウ』を試作することを目的としている。通常NiO薄膜をスパッタ製膜する場合、「透明度」と「高結晶品質」という、本コンセプトの必須条件が満たされることがなかった。平成30年度は、透明複合デバイス実現のために、平成28/29年度に進めてきた研究を継続する形として、「透明な太陽電池」で得られた電力を用いて、「透明なCO2センサ」を駆動させるシステムを、透明基板上に積層して作製し、「透明インテリジェンスマートウィンドウ」実現のための基礎実験を行った。CO2センサには、n型酸化物半導体の一種であるSnO2を、H2雰囲気でアニールを施すことで移動度が増加し、ガスに対する応答特性が向上することを明らかにした。また、各層積層時に界面に生じるスパッタダメージが低減するよう、RFパワーなどを調整することにより、界面再結合が抑制され、太陽電池・センサともに特性が大幅に向上した。併せて、これまでガラス上に試作してきた透明太陽電池を、フレキシブルなプラスチック系透明基板上に作製し、曲げや使用温度変化に対する劣化特性を評価した。また、トランジスタはp型NiOに対する適切な絶縁層の再検討を中心に行い、トランジスタ駆動時に発生するリーク電流を低減させることができるようになった。
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