研究課題/領域番号 |
16K06276
|
研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
中野 由崇 中部大学, 工学部, 教授 (60394722)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | AlGaN/GaNヘテロ構造 / Si基板 / 炭素ドーピング / 欠陥準位 / スイッチング特性 / 炭素アクセプター |
研究実績の概要 |
Si基板上にMOCVD結晶成長したAlGaN/GaNヘテロ構造は低コスト化・大面積化に適しており、その2次元電子ガスの特徴を生かして次世代高周波パワーデバイス用基板として研究・開発が進められている。その際、GaNバッファ層の縦方向リーク電流を低減する目的で、炭素ドーピングによる高抵抗化を行っている。一方で、炭素ドーピングを積極的に行うことで炭素関連の欠陥準位が生成しバルク起因の電流コラプス現象を誘発することが危惧される。本年度は、Si(111)基板上に炭素ドーピングを積極的に行った3水準のAlGaN/GaN/GaN:Cヘテロ構造をMOCVD法で作製し、プレーナー型ショットキーダイオード構造にてオフストレス電圧印加後のターンオン容量回復特性評価と光容量過渡分光法による欠陥準位評価を行い、両者の相関を詳細に検討した。その結果、炭素ドーピング量が多い程、ターンオン回復特性が明らかに遅くなることを確認した。また、光容量過渡分光測定から、炭素ドーピング量が多い程、伝導帯下2.75eVと3.25eVに存在する2種類の炭素関連の欠陥準位濃度が大きく増加することを確認した。更に、それぞれの欠陥準位の光吸収エネルギーに対応する光照射下でのターンオン容量回復特性評価から、GaN:Cバッファ層中に存在する3.25eVの炭素アクセプター準位がターンオン回復特性を支配していることを確認した。これらの実験結果から、炭素ドーピングを積極的に行ったAlGaN/GaN/GaN:Cヘテロ構造では、絶縁体化したGaN:Cバッファ層の上下端がオフ状態で正負に帯電化し、ターンオン時にGaN:Cバッファ層下端の負電荷が中和されにくくなっていることが示唆される。その主原因として、GaN:Cバッファ層に存在する深い炭素アクセプター準位でのホール生成速度の遅さに起因すると考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験は計画通り順調に進んでいるが、研究成果の論文発表が少し遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
Si基板上にMOCVD法を用いて窒化物バッファ層を介して作製した典型的なAlGaN/GaN/GaN:Cヘテロ構造における炭素関連欠陥準位とスイッチング特性の相関については現象論的にはほぼ明らかにすることができた。そのメカニズムとして、GaN:Cバッファ層の絶縁体化と帯電状態の電荷中和モデルを考案しているが、今後は更なる詳細な実験条件をパラメーターとして実験を行い考案モデルを検証する予定である。また、次のステップとして、Si及び窒化物との格子整合性の良い3C-SiC層をガスソースMBE法でSi基板上にヘテロエピタキシャル成長し、その上に窒化物バッファ層を介してAlGaN/GaN/GaN:Cヘテロ構造をMOCVD法で作製し、ヘテロ構造の結晶性の向上を図ることで炭素ドーピングしてもオフストレス電圧印加後のターンオン回復特性を改善できる方策の検討を進める予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本研究では使用するSi基板上AlGaN/GaNヘテロ構造ウエハはウエハメーカーに特別仕様で外注作製しているが、外注先の製造設備不良のため、一部のウエハは発注・入手できなかった。また、研究成果を国際会議で発表する予定であったが、都合が合わず延期した。
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度に特別仕様のSi基板上AlGaN/GaNヘテロ構造ウエハを外注する予定である。また、研究成果を国際会議で発表する予定で研究計画を進めている。
|