研究課題/領域番号 |
16K06277
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
田橋 正浩 中部大学, 工学部, 准教授 (60387636)
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研究分担者 |
後藤 英雄 中部大学, 工学部, 教授 (00195942)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | CZTS / CZTSe / CZTSSe / 有機硫黄原料 / 有機セレン原料 / スピンコート / 太陽電池 / 光吸収層 |
研究実績の概要 |
平成28年度では、安全かつ低コストで高い変換効率を有するCu2ZnSn(S,Se)4太陽電池の製造プロセスを実現するため、「Cu-Zn-Snプリカーサ膜作製工程」と「硫化/セレン化工程」において以下の研究成果を上げることができた。 「Cu-Zn-Snプリカーサ膜作製工程」では、原料溶液中に含まれるCuとZnとSnのモル比が2:1:1と2:1.5:1.1の2種類を用意し、それぞれに対して組成におよぼす焼成温度(400℃-500℃)の影響について詳細に調べた。予想では融点が419℃と低くかつ蒸気圧の高い亜鉛(Zn)だけが減少すると思われたが、銅(Cu)が予想以上に減少することがわかった。銅単体では蒸発しにくいが有機酸塩の状態では有機物と結びついた形で銅が蒸発したものと考えられる。後の「硫化/セレン化工程」とあわせて膜中に含まれるCu,Zn,Snの組成ずれ抑制のための知見を得ることができた。 次に「硫化/セレン化工程」では、ジエチル硫黄とジメチルセレンを用いてCu2ZnSnS4膜とCu2ZnSnSe4膜の作製を試みた。どちらも400℃で熱処理したプリカーサ膜を500℃-550℃で硫化/セレン化処理を施すことで高品質な光吸収層が得られることがわかった。またこれら硫黄とセレンの原料を同時に供給することでCu2ZnSn(S,Se)4混晶膜を作製したところ、硫黄にくらべてセレンの方が膜中に取り込まれやすいことが分かった。膜中に含まれる硫黄とセレンの組成を制御するうえで大変重要な知見を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度の計画で掲げた項目のほとんどを遂行することができた。ここで得られた研究成果を海外の学術論文誌へ投稿するため原稿を執筆中である。 すでに平成29年度の研究計画の一部もすでに着手しており、セル化を行うとともに変換効率の測定を行う準備を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに太陽電池の変換効率向上のためには、ストイキオメトリーな組成ではなくCu-poorかつZn-richな組成が良いと報告されている。そこで原料溶液中のCu,Zn,Snのモル比をパラメータとし、「Cu-Zn-Snプリカーサ膜作製工程」と「硫化/セレン化工程」の各工程における組成を綿密に調べる予定でいる。これにより膜の組成を目的の組成に制御することが可能となる。 また原料に含まれる炭素が膜の構造および物性におよぼす影響について調べる必要がある。炭素を取り除く方策として「硫化/セレン化工程」においてキャリアガスに水素ガスと窒素ガスを採用し、膜中の炭素と水素を反応させることで炭素の除去を試みる。得られた膜の組成や結晶構造におよぼす水素分圧の影響についても調べる。 これらの基礎的な実験データを採取するとともに、セル化と変換効率の測定もあわせて行う。
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