研究実績の概要 |
2019年度まで導電性高分子の電気化学的酸化・還元による形状変化の起源について、その伸縮率、収縮力およびその物性変化を利用したソフトアクチュエータに関する研究を行ってきた。研究期間を延長した本年度はこれまでの研究を展開させることを目標に、ソフトアクチュエータの駆動エネルギーを多様化することでバイオエネルギーに注目した。これは、生体内にあるグルコース、尿素、アスコルビン酸(ASA)などのバイオ材料がアクチュエータの駆動エネルギーとして利用できるかどうかについて調査した。 まず、バイオ燃料電池のキー材料として触媒について探索を行った。導電性高分子は酸化・還元により物性の形状変化のみならず、酸化状態の電子状態が電子とイオンの電導媒体として特異な役割を持つことに注目して、バイオ燃料電池の触媒のみならずメディエータとしての働きを調べた。 ポリアニリン(PANi)、ポリピロール(PPy)およびポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェンポリスチレンスルホン酸)(PEDOT*PSS)と単層カーボンナノチューブ(SWCNT)との複合膜はアスコルビン酸バイオ燃料電池の優れた触媒活性を示すことを、世界で初めて明らかにした。即ち、PEDOT*PSS@SWCNTE複合膜を用いたはAsA燃料電池において、通常用いられる白金触媒の4倍以上の出力(10mWcm^-2)を示した。同様にPANi@SWCNTおよびPPy@SWCNTによる触媒も高い出力を示した。 導電性高分子を触媒に用いた燃料電池の機能として水中溶存酸素による発電は、定格出力で利用する限り、大気による発電能力と変わらないことを明らかにした。燃料電池の特性を利用したバリアフィルムの酸素の透過係数、バイオ分子の拡散係数についての評価方法を提案した。更に、水の電気化学反応を利用した脱酸素装置を作製し、その特性評価を行った。
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