研究課題/領域番号 |
16K06281
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研究機関 | 松江工業高等専門学校 |
研究代表者 |
市川 和典 松江工業高等専門学校, 電子制御工学科, 准教授 (90509936)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | グラフェン / ハイブリッド型デバイス |
研究実績の概要 |
前年度酸素を導入し電流測定から最適化した酸素濃度について今年度はグラフェンのトランジスタを作製し、転写フリーハイブリット型グラフェンデバイスの実現と評価を行った。 昨年度酸化条件の最適化を行ったが傾向は見られたものの電流値にわずかな変化しか見られなかった。XPSによって研究を進めていくにつれて、Niは800℃での酸化速度が非常に早く酸素100%-10分の熱酸化ではすべてのNiが酸化されてしまいアルゴンガスによって希釈が必要であることが明らかとなった。そこで酸化時間を10分と固定し全量30sccmに対して酸素濃度を10%から90%に変化させ実験を行った。その結果、低酸素濃度では最大の電流値が増大するが30~40%の辺りで一度低下し再び上昇するという結果が得られた。これは酸化膜厚によりグラフェンの形成メカニズムが変化したものと考えられ、詳細な分析を引き続き行う。 これらすべての酸素濃度についてトランジスタを作製すると、高い酸素濃度でドレイン電圧を変化させることで通常のトランジスタの特性とメモリを示すヒステリシス特性が現れた。これまでは酸化膜厚によりメモリとトランジスタの作り分けを行う研究計画であったが、酸素濃度が高い条件であればドレイン電圧によってトランジスタとメモリを使い分けることが新たに明らかとなった。 これらの実験結果より当初の目的である転写フリーのハイブリッド型グラフェンデバイスの作製に成功した。そのメカニズムの考察を引き続き行っていく。 また高濃度の酸素はオフ電流が下がりバンドギャップが形成されていることも新たに明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
科研費を申請するにあたり、グラフェン合成前に酸素を導入することでトランジスタとメモリの両機能を持つデバイスを作製する提案を実験によって証明することができた。更にそのメカニズムがドレイン電圧の大小により使い分けができるという新たな知見を得ることができた。またグラフェンのデバイス化の課題であるバンドギャップの形成も同時に行う事ができることが明らかとなり、当初の予定以上に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究は計画通りに進んでいるが進捗状況により、新たにこれまで得られた研究結果をより詳細に分析をおこない、ドレイン電圧の大小によりトランジスタとメモリを使い分けることができるメカニズムとバンドギャップの測定を行っていく。当初の研究計画に基づき絶縁膜の薄膜化とメモリ特性における書き込み消去スピードや情報の保持時間を測定し、メモリ特性から見た最適条件についても研究する。
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次年度使用額が生じた理由 |
概ね予定通りに使用できている。繰り越しとなる37,519円は消耗品購入に使用する予定である。
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