今年度の研究実施計画では、前年度までの結果からより詳細なデバイス特性の評価と、高誘電率材料を絶縁膜に用いて更なる高性能化を目指すものである。
前年度、触媒のNiを酸化することでドレイン電圧の大きさでトランジスタとメモリ特性を使い分けるグラフェンハイブリッドデバイスの作製に成功している。この結果をより詳細に分析すると、酸素濃度90%~100%の時にCu触媒を用いたような基板表面でグラフェンが形成するメカニズムに変化し、多層が出来やすいNiを用いても単層のグラフェンが合成されることが明らかとなった。更にラマン分光測定では欠陥を示すDバンドが小さく高品質なグラフェンが合成されることが明らかになった。またトランジスタの特性において重要なホール移動度が酸素100%において最大で5000cm2/Vsを超える高い値を示した。これまで酸化は高品質なグラフェンを合成することに着目していたが、Niの酸化時間が長くなるにつれて容量値が低下し、完全に酸化させることで最も高い移動度を得ることができる。またグラフェンとNiOはヘテロ接合をしており、2次元電子ガスの状態で移動度が向上するという新たな知見を得ることができた。
一方、高誘電率材料であるアルミナを50nmの膜厚で絶縁膜に用いた場合では、相互コンダクタンスが向上し、これまでよりもより高い移動度を持つハイブリッドデバイスを作製することができ、当初の目的であるデバイスの高性能化を達成することができた。
|