研究課題/領域番号 |
16K06282
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研究機関 | 奈良工業高等専門学校 |
研究代表者 |
藤田 直幸 奈良工業高等専門学校, 電気工学科, 教授 (90249813)
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研究分担者 |
平井 誠 長岡工業高等専門学校, 電気電子システム工学科, 准教授 (00534455)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | グラニュラ薄膜 / 磁場中電析 / Fe-B合金 / 磁気異方性 |
研究実績の概要 |
まずFe-Co-epoxyグラニュラ薄膜の磁場中電析による磁気異方性の形成と制御に取り組んだ。成膜中の磁場の印加により、磁気モーメントが磁場印加方向にそろった形で、原子の配置も異方的になり、磁気異方性が誘導されると考えた。しかし、残念ながら、Fe-Co-epoxyグラニュラ薄膜の磁場中電析による磁気異方性の形成は難しいことが明らかになった。成膜速度が速すぎて、原子の配置を磁場で制御できないことが原因であるかと考え、電流密度、膜組成、溶液温度などを変化させて成膜速度などの制御を試みたが、異方性が形成出来なかった。 さらに、以前は、異方性が形成できていたアモルファスFe-B薄膜についても、条件が変化してアモルファス構造にならない時は、磁気異方性が形成できないことが分かった。このことから、磁場中電析により、磁気異方性を形成するには、結晶構造をアモルファス化させることが重要であることが見いだせた。このことから、アモルファス化していても、磁場印加には何らかの原子配置の変動があると考えられる。以上のことから、Fe-Co-epoxyグラニュラ薄膜ではなくて、Fe-B薄膜を中心に研究を進めることとした。 続いて、磁気異方性が45°ずつずれたアモルファスFe-B合金薄膜を4層重ねた多層膜を作製した。この磁性膜は、4層の相乗効果で全体としては等方的な性質を持つ膜になっていることが明らかにできた。この膜を使うことで、電磁波吸収の方向依存性が低減することが分かった。 磁性層間を分離する中間層となるepoxy薄膜の無電解析出についても、詳細な検討を行い、均一な薄膜を得るための条件を見出すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初のFe-Co-epoxyについては、磁場中電析により磁気異方性が形成できなかったが、代わりにアモルファスFe-B薄膜を使うことで、異方性が形成できることが見いだせ、異方性多層膜の形成にも成功した。材料の変更はあるが、当初の目標に近い成果が上がっている。
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今後の研究の推進方策 |
多層膜の中間絶縁層の厚さにより磁気特性が変化することが計算でも分かっているので、絶縁層を形成した多層膜の作製に取り組む。また、磁気共鳴周波数の測定などの電磁波吸収特性の直接的な評価を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究は予定通り進んでいるが、当初外注する予定であった部品を内製したので、今年度は支出を抑えることができた。節約した繰り越し分は、国際学会などの成果発表を積極的に行うなどして活用する。
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