昨年度、Fe-Co-epoxyグラニュラ電析膜においては、成膜速度が高いため、磁場印加による原子配置の制御が困難であるため、磁場中電析によっては誘導磁気異方性が形成できないことが明らかになった。 そこで、以前、我々の研究室で、磁場中電析によって磁気異方性が形成できていたアモルファスFe-B薄膜について実験を行うことにした。Fe-B薄膜がアモルファス構造にならない時は、磁気異方性が形成できないことは昨年度見いだせたが、再現性良くアモルファス構造を得るための条件が見いだせていなかった。 そこで改めて、再現性よくアモルファス膜が得られる条件について検討を行った。まず、電析浴を建浴する際の手順を見直した。薬品を混ぜる際の純水の温度、薬品(硫酸第一鉄、水素化ホウ素ナトリウム、酒石酸カリウムナトリウム、硫酸アンモニウム、水酸化ナトリウム)を混ぜる順序や時間間隔などの条件を種々変化させて検討を行った。しかし、結晶構造と電析浴の建浴手順の間に明確な関係性は見いだせなかった。続いて、成膜時の溶液温度について検討したところ、Fe-B膜は、水素化ホウ素ナトリウムが還元剤として働く45℃以上では、Feが析出して結晶化してしまうことが分かった。その結果、成膜温度は、還元剤が活性にならない30℃が望ましいことが分かった。 この条件で、電析中に基板を回転させる治具を使って、磁化容易軸の方向が45°ずつずれた4層のアモルファスFe-B多層膜を作製したところ、全体では等方性を持つ膜が得られ、電磁波の方向が変化した場合でも電磁波吸収可能な膜の作製が行えた。
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