本研究の目的は、超強磁場NMR超伝導磁石設計のためのデータ蓄積のために、高温超伝導線材の臨界電流の磁場引火角度依存性を低温・強磁場中で測定評価する装置を開発することであった。一般的な回転プローブでは垂直ボアを有するソレノイド磁石中に試料を水平方向に設置し、回転軸が水平方向であるが、本研究ではスプリット型(磁場方向は水平方向)磁石中でプローブ全体を回転させる計画であった。しかし、一昨年度に発生した温度可変インサート (VTI) の真空断熱槽におけるヘリウム極微量漏れに起因する真空劣化と熱侵入増加が復旧せず、昨年度も修理作業を複数回行うなど時間を取られたため、大幅に遅延していた。VTIの真空劣化については、昨年度ヘリウム極微量漏れを修理し、試運転にて確認していたが、再び真空劣化が発生し、温度調節どころかマグネット槽への液体ヘリウム充填が不可能となった。フード法によるヘリウム漏れ試験を行った結果、インジウムシール部分からのヘリウム極微量漏れであることが判明し、本質的に修理不可能であることがわかったため、計画を変更することとした。スプリット型(磁場方向が水平方向)磁石用のプローブを整備する一方で、通常のソレノイドマグネット中で角度依存性を測定するプローブの製作も進めた。回転部分の電流導入に希土類系高温超伝導線材を用いることでコンパクト化した。PCから試料回転、超伝導磁石運転、試料への電流供給制御を行うプログラムを作成し、動作確認を行った。
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