光信号処理ネットワークのキーデバイスである通信用光メモリについて、磁性体の不揮発性を利用した新規な磁性光メモリの開発を行った。本デバイスは、光導波路を伝搬する信号光に対して光熱変換を利用したキュリー点記録による光-磁気変換を記録動作の原理とし、記録された磁化方向に対して発現する磁気光学移相効果を利用して光信号強度を変調する磁気-光変換を再生動作の原理とする。特に導波路を伝搬する光パルスによって磁性体を加熱し磁化反転を実現することが新しい試みとなる。 記録動作では、リング共振器を用いて光信号が同じ領域を何度も周回することで、光吸収と発熱を局所的に集中させる手法を提案した。発熱層として金属を装荷したサンプルを作製し、その光学測定から光熱変換効率を解析し、6.8mWの入力光に対して300℃以上の温度上昇が得られたことを実験的に確かめた。 再生動作では、記録層となる磁性金属の発生する磁場によって磁気光学効果を制御できることを示す必要がある。そこで、磁気光学ガーネットCe:YIG上のアモルファスシリコン光導波路の上部に形成した薄膜磁石FeCoBの磁化反転を行い、その光回路の応答を測定した。時間幅1マイクロ秒の電流パルスを正負に向きを変えて印加した際、それに応じて光出力状態が変化し、パルス消失後も薄膜磁石の不揮発性によりその状態を保持する光メモリ機能が観測された。 全体のメモリ動作実証には至らなかったものの、これらの成果より提案手法による磁性光メモリの実現可能性を示すことができた。
|