研究実績の概要 |
ワイドバンドギャップ材料である酸化亜鉛(ZnO)半導体は、近年、高品質な薄膜が得られるようになり、酸化インジウムスズ(ITO)に替わる透明導電膜(TCO)としての用途だけでなく、新たな機能を有する光・電子デバイス応用を想定した開発レベルに達しつつある。本研究は、分子線エピタキシ(MBE)法と原子状酸素ラジカル(O*)を利用した独自の低損傷・低温成長が可能な成膜プロセスにより、フレキシブル応用が可能なZnOデバイス作製技術の開発を目指す。また、PET、PEN、PCなどの各種有機フレキシブル基板上における構造・特性安定性に関するメカニズムを解明し、フレキシブルZnO系酸化物半導体デバイスの最適化と新たなデバイス応用の可能性を探る。
今年度は各種フレキシブルプラスチック(PET, PEN, PC)基板上にプラズマ支援分子線堆積(PAMBD)法を用いてガリウム(Ga)添加したZnO(GZO)薄膜を非加熱の条件で形成し、構造および電気的/光学的特性を調査して、以下の結果を得た。各種フレキシブル基板上で成膜を行った場合においてもガラス基板上GZO薄膜と同程度の抵抗率(~4×10^-4Ωcm)を示した。どの基板上においても明瞭なZnO(002)XRDピークが観測された。基板間における半値全幅の違いは少ない。ガリウム添加量の増加に伴いc格子定数の増大傾向が見られた。また、PET, PENに比べてPC基板上のGZO薄膜のc格子定数の増大は大きい。どの基板上においても可視光領域で高い透過率(>90%)が得られた。GZO薄膜に繰り返し曲げ負荷を与えた時の抵抗率の評価を行った。PCに比べてPET上におけるGZO薄膜は抵抗率の変化が少ないことを明らかにした。
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