本研究では、将来の増え続ける電力需要に応える超低損失パワーデバイスの創成を目指し、応募者らが独自開発した新規窒化物ヘテロ構造InAlN/AlGaNによるMISゲートトランジスタ実現のための基盤技術構築を目的として、MISゲート形成プロセスのフォトルミネッセンス測定による評価、界面準位密度の電気的特性の評価を行い、これにより界面準位の形成に係るプロセス因子抽出を進めることを計画した。 MOCVD法により成長した組成の異なる3種類のAlGaNエピタキシャル膜について、「As-grownサンプル」、「RIEによりドライエッチングを施したサンプル」、「原子層堆積法(ALD法)によりAl2O3絶縁膜を形成したサンプル」を作製し、各々について、紫外線励起フォトルミネッセンス法による発光スペクトル測定ならびに時間分解測定を実施した。実験の結果、各組成のサンプルの各プロセス段階における発光挙動についての知見が得られた。特筆すべきこととして、Al組成が増加するに伴い発光ライフタイムが長くなることが示された。また、概して、加工プロセスの影響は懸念する大きくはないが、ドライエッチング後に一旦導入されたダメージがAl2O3膜を形成することで回復する兆候があることが示された。MISダイオードの試作とC-V評価によりMIS界面準位密度の評価を行ったところ、AlGaNチャネルMISダイオードにおけるMIS界面準位は、そのバンドギャップ差を考慮すると、GaNチャネルMISダイオードのMIS準位と大きく矛盾しないものであることが確認できた。これらの実験結果を踏まえ、AlGaNチャネルヘテロ構造を用いたMISゲートトランジスタを試作・評価したところ、試作デバイスが良好なピンチオフ特性とGaN系HFETを超える高いオフ耐圧を示すことを確認した。
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