研究実績の概要 |
積層型イメージセンサーの実現には、有機光電変換膜性能に影響を与えない温度制限下で優れた特性を有するIn-Ga-Zn-O薄膜トランジスタ(IGZO TFT)を実現する必要がある。この実現に向け、最終年度は1) IGZOスパッタ膜中の欠陥修復プロセスの低温化、2)ゲート絶縁膜の低温形成技術、の検討にて全ての作成工程を150℃以下で実施したIGZO TFTの実証を行った。 昨年度は新たなIGZO低温形成手法として、スパッタ成膜時に従来のアルゴンと酸素の混合ガスに水素を添加することで、良好なTFT特性が得られることを見いだした[Applied Physics Express, 11 081101 (2018)]。これまでIGZO中の水素はキャリア濃度を増大させることが知られているが、我々はスパッタ製膜時に導入した水素がその後の150℃熱処理によりキャリア抑制剤として働くことをはじめて報告した。ゲート絶縁膜の低温形成には高誘電率材料である酸化アルミニウムを陽極酸化法にて作製した。これら研究により、ゲート駆動電圧±1Vの低電圧駆動にてON/OFF電流比6桁以上、サブスレッショルド特性80 mV/dec.、電界効果移動度6.5 cm2/Vsを有する優れたIGZO TFTを最高温度150℃で実現した。 水素添加IGZOはTFT応用に加えてフレキシブルショットキーダイオードへの応用も行った。水素添加IGZOを半導体層に、酸化銀をショットキー電極に用いたフレキシブルダイオードをポリエチレンナフタレート(PEN)基板上で実証し、これまでの報告で最も優れた整流比10桁以上、障壁高さ1.17 eV、理想因子1.07を有するフレキシブルIGZOダイオードを実証した。 本研究成果は積層型イメージセンサーやフレキシブルかつ低電力なモバイルデバイス、センサー応用に向けた基盤技術となることが期待できる。
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