研究課題/領域番号 |
16K06314
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研究機関 | 芝浦工業大学 |
研究代表者 |
堀尾 和重 芝浦工業大学, システム理工学部, 教授 (10165590)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 窒化ガリウム / HEMT / 電流コラプス / バッファ層 / 深いアクセプタ / 耐圧 / 2次元解析 |
研究実績の概要 |
Feドープ半絶縁性バッファ層を対象とし,GaN禁制帯中央より上に深いアクセプタを有するAlGaN/GaN HEMTの過度応答特性を計算し,アンドープ半絶縁性バッファ層を有する場合(禁制帯中央より上にある深いドナーが禁制帯中央より下にあるアクセプタを補償するとモデル化した)と比較した。その結果,Feドープ半絶縁性バッファ層内の深いアクセプタとアンドープ半絶縁性バッファ層内のドナーのエネルギーレベルや電子や正孔に対する捕獲断面積を同じように設定した場合,いわゆるドレインラグや電流コラプスといった緩やかな電流応答が極めて似た特性になることを見出した。また,両者のアクセプタ濃度が等しい場合,ラグや電流コラプスの程度が定量的に極めて類似した値になることを見出した。これらより,Feドープ半絶縁性内の深いアクセプタとアンドープ半絶縁性バッファ層内の深いドナーが電子トラップとして極めて似た挙動を示すことが示された。 また,ラグ現象や電流コラプスのFeドープ半絶縁性バッファ層内アクセプタ濃度依存性について調べた。その結果,いわゆるフィールドプレートを有しない場合は,予想どうりアクセプタ濃度が高くなると共にラグ現象や電流コラプスの程度は大きくなった。しかしながら,フィールドプレートを有する場合には,アクセプタ濃度が高くなるにつれラグ現象や電流コラプスの程度が小さくなることを見出した。これは,アクセプタ濃度が高い場合,電子がバッファ層内に余り進入せず,従ってデバイス表面のフィールドプレートの効果が大きく現れたものと解釈された。 さらに,SiNと高誘電率薄膜の二重パシベーション膜を有するAlgaN/GaN HEMTの耐圧特性を計算した。その結果高誘電率薄膜の導入により,耐圧が向上することを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Feドープ半絶縁性バッファ層内の深いアクセプタとアンドープ半絶縁性バッファ層内の深いドナーが電子トラップとして似た働きをすることを示すことができた。また,フィールドプレートを有するAlGaN/GaN HEMTでは,バッファ層内のアクセプタ濃度が高い程ラグ現象や電流コラプスが抑えられうるという新たな知見を得た。さらに,SiNと高誘電率薄膜を有する二重バシベーション構造AlGaN/GaN HEMTでは耐圧が向上することを示すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
SiNと高誘電率薄膜を有する二重パシベーション膜を有するAlGaN/GaN HEMTについて,それぞれの膜厚や高誘電率薄膜の比誘電率により耐圧がどのように変化するのか詳細に調べる。また,フィールドプレートと高誘電率薄膜を有する構造の耐圧特性を計算し,どのように耐圧特性が変化するか調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費としてワークステーションを購入する予定であったが,諸般の事情より既存のものを活用することにしたため。
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次年度使用額の使用計画 |
研究成果発表のための旅費に多くを充てたいと思う。
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