Feドープ半絶縁性バッファ層を対象とし,伝導帯下端から0.5 eV程度の位置に深いアクセプタを有するフィールドプレート構造AlGaN/GaN HEMTのオフ耐圧特性を計算した。特に,耐圧のフィールドプレート下SiN膜厚依存性やバッファ層内の深いアクセプタ濃度依存性を調べた。その結果,SiN膜厚が0.03 um以下と非常に薄くなると耐圧が非常に低くなることがわかった。これは,フィールドプレートがゲート電極と同じ働きをするようになり,フィールドプレート端の電界が非常に高くなるためと解釈された。一方,SiN膜厚を0.3から0.5 umと厚くすると,耐圧の低下が見られたが,これはフィールドプレートの効果が小さくなり,ゲート端の電界が高いままになるためと解釈された。従って,高い耐圧を得るにはSiN膜厚にある最適値(0.1-0.2 um)があると結論された。一方,耐圧のバッファ層内アクセプタ濃度依存性については,その濃度が高いほど耐圧が向上するとの結果が得られた。これは,アクセプタ濃度が高いほどバッファ層リーク電流が低減されるためと解釈された。 このほか,SiN膜と高誘電率膜(high-k膜)からなる2重パシベーション膜を有するAlGaN/GaN HEMTの耐圧特性について,そのSiN膜厚及びhigh-k膜厚依存性について検討した。その結果,SiN膜厚が薄い(0.01-0.02 um)とhigh-k膜厚をある程度厚くすると(0.1 um),high-k膜厚導入による耐圧の向上が顕著に現れた。しかしながら,SiN膜厚を厚くすると(0.1 um)high-k膜を厚くしても(0.1-0.5 um)耐圧の向上はかなり制限されるものとなった。従ってこの構造については,SiN膜厚にかなりの注意を払うべきとの結論を得た。
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