研究実績の概要 |
本研究課題は、GaInSbを用いた電子有効質量me*の最適設計により、界面ラフネス散乱の影響を抑えながら高い電子移動度μeと高い電子濃度Neを同時に実現した量子井戸QWを作製し、テラヘルツ領域で動作する極限性能トランジスタを開発することを目的とする。以下に最終年度の平成30年度の研究実績を示す。 (1)歪Al0.40In0.60Sb/Al0.25In0.75Sbステップバッファ上のGa0.22In0.78Sb QWと歪Al0.25In0.75Sb/Al0.15In0.85Sbステップバッファ上のInSb QWの電子輸送特性を比較した。ステップバッファ上のGaInSb QWではQW深さを保ちながらQWのIn組成比を高めることが可能となり、μe=15,480 cm2/Vs, Ne=2.05×1012 cm-2, シート抵抗Rs=197 ohm/squareを得た。これらはInSb QWの値のそれぞれ87 %、193 %、59 %であった。 (2)短チャネル効果を抑制して高い特性を実現するには、ゲート・チャネル間距離を短縮する必要があり、そのためには狭いQW幅においても高いμeとNeを実現できることが必要である。そこでQW幅を変えてステップバッファ上のGa0.22In0.78Sb QWとInSb QWを成長し、電子輸送特性を比較した。QW幅を狭めると量子効果の発現によりNeが減少し、またラフネス散乱の増加によりμeが低減するが、me*が大きいGa0.22In0.78Sb QWではこれらの影響が小さく、QW幅の短縮に有利であることを示した。 (3)歪Al0.40In0.60Sb/Al0.30In0.70Sbステップバッファ上のGa0.22In0.78Sb QW(μe=12,590 cm2/Vs,Ne=2.15×1012 cm-2)を用いたHEMTを試作し、fT= 246 GHzを得た。
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