研究課題/領域番号 |
16K06327
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研究機関 | 大阪工業大学 |
研究代表者 |
前元 利彦 大阪工業大学, 工学部, 教授 (80280072)
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研究分担者 |
吉村 勉 大阪工業大学, 工学部, 教授 (00460767)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 酸化物半導体 / セルフスイッチングダイオ ード / エナジーハーベスティング / レクテナ / フレキシブル / 薄膜トランジスタ |
研究実績の概要 |
本研究では、pn 接合やショットキー型の接合を用いずに酸化物ワイドバンドギャップ半導体でかつ透明な酸化亜鉛(ZnO)を用いてナノ構造を有する完全透明なプレーナ型のセルフスイッチングダイオード(Self-Switching Diode; SSD)を開発することを目的とする。さらに応用展開として、電波を用いた高周波タグのデータを非接触で読み書きするRFID(Radio frequency identifier)システムや、マイクロ波を直流電流に整流変換するアンテナであるレクテナ(Rectifying antenna)へ利用することで、無線LAN のような微弱電波やマイクロ波エネルギーを高効率で電流に常時変換できるエナジーハーベスティング回路への応用を目指す。 平成29年度はMIS構造を有するセルフスイッチングダイオード(MIS-type SSD)を作製し、その電流-電圧特性や整流比を評価した。将来、プラスチックのような熱に弱い基板にも応用できるように、基板加熱せずにガラス基板上にZnO薄膜を成膜し、MIS型SSDの作製を行った。MIS型SSDはTFT構造と類似する構造を持ち、TFTの大きなオン-オフ比を整流特性に反映できることから、ゲートとソースを導通させたことで容易にダイオード特性が得られた。作製されたMIS型ZnO-SSDの電流-電圧特性から、最大電流値7.0 mA/mm、6桁以上の整流比が得られ、我々が以前報告したZnO-SSDと比べ、整流特性が大きく改善された。また、フレキシブルTFTの作製プロセスを用いて自在に曲がる整流素子の作製を試みた。作製したSSDにおいて曲率15 mmの曲げに対してもフラットな状態と比べてほぼ整流比の低下はなく、フレキシブルなMIS-type SSDの作製にも成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
MIS構造を有するセルフスイッチングダイオード(MIS-type SSD)を作製し、その電流-電圧特性や整流比を評価した。将来、プラスチックのような熱に弱い基板にも応用できるように、基板加熱せずにガラス基板上にZnO薄膜を成膜し、MIS型SSDの作製を行った。MIS型SSDはTFT構造と類似する構造を持ち、TFTの大きなオン-オフ比を整流特性に反映できることから、ゲートとソースを導通させたことで容易にダイオード特性が得られた。作製されたMIS型ZnO-SSDの電流-電圧特性から、最大電流値7.0mA/mm、6桁以上の整流比が得られ、我々が以前報告したZnO-SSDと比べ、整流特性が大きく改善された。 他方、シクロオレフィンポリマー(COP)をフレキシブル基板とする酸化亜鉛(ZnO)薄膜トランジスタ(TFT)の作製プロセスを開発し、曲げ耐性試験及びTFTの特性変化のメカニズムについて詳しく調査した。COPは有機系の薬品耐性があり表面平坦性に優れていることからTFT作製において従来のフレキシブル基板と比較しても同等またはそれ以上の優位性があることを示された。曲げ耐性試験においては、約7 mmの曲率半径で端子抵抗が増大し、これは下地のSiO2バッファ層が破断することによるZnO膜の延伸変形が要因であることが示唆された。その解決方法として、表面ひずみに関する考察を行い、基板の厚みを薄くすることで特性劣化を防ぐことができることを明らかにした。プロセス最適化とともに基板の厚さを 25μmまで薄くすることで曲率半径3mmまでの曲げ耐性を持ったTFTの作製に成功した。このフレキシブルトランジスタの加工技術を用いて、フレキシブルなMIS-type SSDの作製にも成功している。 今後、構造の最適化を進めながら特性向上を図る必要もあるが、概ね年度の目標は達成された。
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今後の研究の推進方策 |
今年度については以下の項目について重点的に推進する。
1.ZnO薄膜の結晶成長と高移動度化:レクテナを開発する上で母体となる半導体の結晶の電気特性は重要である。スパッタ法を始め、良質な薄膜が得られるPLD 法、低コスト・大面積化にも展開できる溶液法など、様々な手法により薄膜の結晶成長を行い、成長条件の最適化により高い電子移動度をもつレクテナに最適なZnO 薄膜を得る。 2.透明化・フレキシブル化:完全透明なプレーナ型のセルフスイッチングダイオード(SSD)に向けて、透明導電膜の導入ならびにフレキシブル基板上への形成を図る。 3.アンテナ構造の検討と試作:電波を用いた高周波タグのデータを非接触で読み書きするRFID(Radio frequency identifier)システムや、マイクロ波を直流電流に整流変換するアンテナであるレクテナ(Rectifying antenna)へ利用することで、無線LAN のような微弱電波やマイクロ波エネルギーを高効率で電流に常時変換できるエナジーハーベスティング回路への応用を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 平成29年度は、おおむね研究は順調に進展し予算も執行できたが、一部予算が残額となった。 (使用計画) 少額でもあるので、平成30年度に確実に執行する。
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