本研究では、pn接合やショットキー型の接合を用いずに酸化物ワイドバンドギャップ半導体でかつ透明な酸化亜鉛(ZnO)を用いてナノ構造を有する完全透明なプレーナ型のダイオードを開発することを目的とした。さらに応用展開として、電波を用いた高周波タグのデータを非接触で読み書きするRFID(Radio frequency identifier)システムや、マイクロ波を直流電流に整流変換するアンテナであるレクテナ(Rectifyingantenna)へ利用することで、無線LAN のような微弱電波やマイクロ波エネルギーを高効率で電流に常時変換できるエナジーハーベスティング回路への応用を目指した。 平成30年度はチオフェン系導電性高分子PEDOT:PSSを用いてZnO薄膜とのショットキーバリアダイオード(SBD)を作製し、整流特性の改善とフレキシブル化への展開を検討した。PEDOT:PSSは塗布回数で膜厚および導電性を制御できることが分かった。また、n層にZnO薄膜と単結晶ZnOに用いて100℃以下のデバイスプロセスによりSBDを作製してその特性比較を行った。それらの結果から、ある程度のn層の膜厚と界面の平坦性制御が重要であることが分かった。他方、ダイオードやレクテナのフレキシブル化を念頭に、シクロオレフィンポリマー(COP)をフレキシブル基板とする酸化亜鉛(ZnO)薄膜トランジスタ(TFT)の作製プロセスを開発し、曲げ耐性試験及びTFT の特性変化のメカニズムについて詳しく調査した。繰り返しの曲げ耐性試験では,曲率半径5mmで100回の繰り返しでもTFTは安定に動作したことから、有機材料並みの柔軟性を有することが明らかになった。今後、柔らかいフィルム素材の上に酸化物半導体を形成する技術は、新しいセンシング技術、ウエラブルセンサなど人間の生体情報を計測する技術への応用も期待できる。
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