研究課題/領域番号 |
16K06332
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
山本 学 北海道大学, 情報科学研究科, 准教授 (20301939)
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研究期間 (年度) |
2016-10-21 – 2019-03-31
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キーワード | アンテナ / MIMO技術 / 未利用周波数帯 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,未利用周波数帯域における高速無線伝送方式に対応可能な高機能アンテナ技術を開発・提供することにより,超高速ワイヤレスシステムの飛躍的発展と,同システムにおける新しい周波数資源の利活用促進に資することにある.今年度は,MIMO対応アンテナシステムのための素子アンテナ技術に関する検討を行い,以下の成果を得た.
1,MIMO対応アンテナシステムを構成するための素子アンテナとして,誘電体基板上に作成可能であり,未利用周波数帯への対応も可能な特徴を有する広帯域葉状モノポール及びノッチアンテナを開発した.初めに,これらのアンテナ素子について理想的な励振を仮定し,低マイクロ波帯において,放射指向性及び利得などのアンテナ諸特性がMIMO対応アンテナシステムに適合するように,放射素子の形状・配置法等について,数値シミュレーションと測定の両面から最適化を行った.次に,放射素子を励振するための伝送線路として,平面型伝送線路であるマイクロストリップ線路を採用し,上述のアンテナ素子と,本伝送線路とを同一基板上に集積化した場合について,アンテナ素子と線路との最適な結合法を開発した.更に,高マイクロ波帯であるUWBハイバンド(7GHz~10GHz)において,上記の過程を繰り返すことで,MIMO対応アンテナシステムのための素子アンテナ技術を構築した.
2,MIMO対応マルチアンテナを模擬した基本モデルとして,上記1,の素子アンテナを同一基板上に複数個配置したアンテナ系について,数値シミュレーションを行い,その結果を踏まえつつ,素子アンテナ間の相互干渉抑制の観点から,素子アンテナの形状及び配置法の最適化を行った.本検討は,高マイクロ波帯であるUWBハイバンド(7GHz~10GHz)において行われた.次年度以降,本成果を踏まえて,ミリ波帯などの未利用周波数帯の利用を想定した検討を行う
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
MIMO対応アンテナシステムを構成するための素子アンテナ技術を開発するとともに,MIMO対応マルチアンテナを模擬した基本モデルにおける素子アンテナの形状及び配置法の最適化を行った.本年度に計画していた課題について,予定していた成果が得られていることから,おおむね順調に進展していると判断される.
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今後の研究の推進方策 |
本年度で得られた成果を発展させることで,未利用周波数帯におけるMIMO対応マルチアンテナ技術の開発を進める.本年度で開発した素子アンテナを複数(3素子以上)用いたアンテナ系に,アンテナ素子間干渉抑制手法を導入した場合につき,時間領域差分法(FDTD法)などによる数値シミュレーションを行う.その結果を踏まえながら,素子アンテナ間の相互干渉を抑えつつ複数のアンテナ素子間隔を最小化することを目標として,アンテナ素子の最適配置法および形状の最適化を進める.
更に,多くの素子アンテナの給電線路からなる給電回路についても,上記の目標をクリアすることができるように,給電回路構成法を最適化する.以上の過程で最適化されたアンテナ系を試作し,その諸特性の測定を行うとともに,試作アンテナ系を用いた伝搬測定を行い,数値シミュレーションによる最適化の妥当性を確認する.測定結果を適宜フィードバックすることで,MIMO対応マルチアンテナ構成法を確立する.
以上の検討は,初めに低マイクロ波帯などの既存周波数帯において行う.その結果を踏まえて,上記の課題に関して高マイクロ波帯やミリ波帯などの未利用周波数帯を想定した検討を行うことで,未利用周波数帯におけるMIMO対応マルチアンテナ技術を確立する.
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度において,数値シミュレーションによるアンテナ特性評価及び最適化を目的として,数値計算用ワークステーションを購入するための物品費を計上していたが,ワークステーション購入費が当初の見積額よりも安価であったため,次年度使用額が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は,平成29年度において購入を予定しているアンテナ・アナライザ導入の際に活用するとともに,成果発表のための旅費・学会参加費用等として有効に使用する計画である.
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