本研究では,MHz帯を利用する無線電力伝送システムにおける電波の安全性評価指標として,比吸収率(SAR)測定に着目し,その実現に必要となる標準電磁界強度を決定する方法を確立するための理論的および実験的検証を行うことを目的としている. 平成28年度当初は,標準アンテナとして微小シールデッド・ループアンテナを選択した場合の検討を行ったが,組織等価液剤中でも反射係数S11の大きさが1に近く,送信ループアンテナ係数に対する大きな誤差要因となることが判明した.この対応策として,標準アンテナとして微小ダイポールアンテナを選択したところ,反射係数が改善され(S11dBで-15dB程度),懸念の誤差要因を取り除くことができた.このように,実験室内に設置可能な簡易水槽内において,ダイポールアンテナの送信アンテナ係数を利用することにより液剤中において標準電界を与えることができるという見通しを得た. 平成29年度は,微小ダイポールアンテナを使用する場合の問題点を検討した.(1) ダイポールアンテナにより生成される標準電界は,アンテナより100mm以内で推定する必要があること,(2) 電界強度を距離の有理関数であてはめられることを明らかにするとともに,(3) 高精度プローブ較正を実現するために,厳密な電力伝達公式を利用し,電界強度を算出できるように定式化の見直しを行った. 平成30年度は,(4) 送信アンテナ係数および標準電界を求めるための定式化を改善したことに伴う影響評価,(5) ダイポール平衡給電を実現するために使用する180度ハイブリッドの効果について検討,(6) 本標準電界法に関わる不確かさ評価を行った.標準電界推定に関する拡張不確かさは7%以内と算出された. 以上から,標準電界を用いたMHz帯におけるSARプローブ較正手法を確立し,その不確かさ評価により本開発手法の妥当性を確認した.
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