本研究では、電波無線通信で用いられている直交周波数分割多重(OFDM)方式を、強度変調・直接検波を用いる光無線通信に応用する研究に取り組んでいる。特に、光無線OFDM方式の一つであるACO-OFDM方式に着目し、その周波数利用効率の改善についての研究に取り組んでいる。平成30年度の研究実績の概要を以下に示す。 1. ACO-OFDM方式の周波数利用効率を高めるために、2つの方式を適用することを検討した。一つは、デュアルモード(DM)変調の適用であり、もう一つは、コードシフトキーイング(CSK)の適用である。DM変調では、各サブキャリアの変調の際、2種類の変調方式を選択的に用いる。これにより伝送できる情報量を増やせる場合がある。解析の結果、ACO-OFDM方式においてもDM変調を適用することができ、周波数利用効率を改善できることを明らかにした。CSKを適用する方式は、OFDM信号上でコードシフトキーイングによる情報伝送も行うものである。このとき、信号の占める帯域幅は増加しない。平成30年度は、基本的な性能解析として、電波無線通信におけるOFDM方式を想定して解析を進めた。解析の結果、1サブキャリアあたりの伝送情報量を増やせると同時に、誤り率特性の改善が図れることが確認できた。 2. 光無線OFDM方式においても、信号のピーク電力低減は検討課題の一つである。従来のピーク電力低減手法の一つとして、PTS法とプリコーディング法を組み合わせた方法がある。本研究では、従来法とは異なる方法でPTS法とプリコーディング法を組み合わせる、新たなピーク電力を低減法を考案した。平成30年度は、電波無線通信におけるOFDM方式へ提案方式を適用し、性能の解析を行った。その結果、用意する候補信号数を同じとした場合に、提案法は従来法よりもピーク電力低減効果に優れることが確認できた。
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