研究課題/領域番号 |
16K06354
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
衣斐 信介 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (10448087)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 位置推定 / BLE / 最大事後確率推定 / フィンガープリント / 多次元信号処理 |
研究実績の概要 |
屋内位置推定として、小型かつ省電力で普及率の高い BLE (Bluetooth Low Energy) の RSSI (Received Signal Strength Indicator) を用いたフィンガープリントによる位置推定手法の検討を行った。BLE の RSSI 値が送受信機の位置が固定されていても確率的に変動することに着目し、教師データを一定時間に取得した RSSI の正規化ヒストグラムで表現した。推定精度向上には、多数の受信機を用いた RSSI の大規模観測が有効であるが、ヒストグラム次元が受信機数の増加に伴い指数的に増加してしまう問題がある。この問題に対し、各受信機で保持している教師データに基づいて位置を推定した後、それらの結果を確率論の観点から統合することで教師データの次元および推定時の演算量を削減する方法を提案した。このとき、ヒストグラムのピーク値と、推定時の RSSI 観測値が僅かにずれることで、尤度が著しく低下し、推定精度も低下してしまうという問題に対し、ノンパラメトリック手法であるカーネル密度推定を用いてヒストグラムを平滑化することで、RSSI の変動による影響を軽減し、実証実験を通して推定精度の向上を確認した。 また、BLE が送信するビーコン信号の受信感度を改善するために、繰り返し信号検出を行う手法を提案し、その有効性を計算機シミュレーションにより確認した。この信号検出精度を実装することにより、ビーコンパケットの損失を低減することが可能となり、位置推定精度の改善に有効であると考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度の研究実施計画の内、(1)BLE位置推定の繰り返し信号処理法の確率における「A.RSSIデータの前処理」の項目では、8台のBLEを内蔵したRaspberry Pi3 Model Bの超小型計算機を実験室の天井に配置し、BLEユーザ端末が送信するBLEパケットを受信することでRSSI情報を収集する大規模観測環境環境を構築した。この環境にて、位置推定のための教師データとなるヒストグラムを生成し、最大事後確率規範に基づく位置推定を行ったが、推定精度が良いものではなかった。そこで当初の計画通り、RSSIの分布の外れ値対策を検討し、ノンパラメトリック手法であるカーネル密度推定を用いてヒストグラムを平滑化するデータ前処理が推定精度の改善に有効であることを確認した。また、BLEが送信するビーコン信号の受信感度を改善するために、繰り返し信号検出を行う手法を提案し、その有効性を計算機シミュレーションにより確認した。 「B.繰り返し位置推定」の項目では、各受信機で保持している教師データに基づいて位置を推定した後、それらの結果を最大事後確率規範の確率論の観点から繰り返し統合処理をすることで教師データの次元および推定時の演算量を実現範囲内とする多次元位置推定手法を提案した。 「C.実証実験」の項目では、室内環境における提案する BLE 位置推定手法により、10秒間の観測で1.5m四方のエリアの位置特定が60%以上、3m四方では85%以上であることを確認し、その有効性を確認した。 上記を理由に、進捗状況はおおむね順調に進展していると判断できる。
|
今後の研究の推進方策 |
平成29年度の研究実施計画に従い、(2)監視カメラ位置推定との統合を検討する.「A.繰り返し統合推定」の項目では、監視カメラとしてKinectセンサを用いる場合、リアルタイムに3次元の位置推定を行い推定結果のヒストグラムを求め、そのヒストグラムから成る確率密度関数を (1)-Bの繰り返し位置推定信号処理の内部に導入(統合)し、ターボ原理に基づく繰り返し位置推定を行う。 また、「B.実証実験」の項目にて、(1)-Cで得られた位置推定精度が改善可能であることを実証する。このとき、BLEの識別情報であるUUIDを監視映像上の人物に付記されるようにし、個人の特定が可能であることを明らかにする。
|