これまでネットワーク化制御に適した量子化器としてデルタシグマ変調器の研究を行い、その最適設計法を開発するとともに、性能評価を行ってきた。研究最終年度である本年は、開発した手法を実際のネットワーク化制御に適用するとともに、得られた量子化に関する知見を離散時間システムの実現に応用した。具体的には、以下のとおりである。 理想モデルに追従するよう制御するモデル追従制御においてディジタル制御器を用いる場合、量子化された信号がコントローラへ入力される。このとき、開発したデルタシグマ変調器による量子化を適用することで、従来より量子化誤差の影響が低減できることを示している。 制御入力に制限があるシステムではワインドアップ現象により性能劣化する場合がある。量子化では、ある範囲の数値以外の数値に対してはオーバーフローが発生する。オーバーフローが発生すると制御入力が制限されることになり、ワインドアップ現象が発生する可能性がある。適切に設計した複数のデルタシグマ変調器を用いることで、量子化誤差の影響を低減化しつつ、ワインドアップ現象に対応する方法を提案している。 DC/ACインバータは2値パルス信号を回路に入力することで、直流電流を交流電流に変換する。2値パルス信号の発生のため、パルス幅変調器が利用されている。望ましい2値パルス信号をデルタシグマ変調器で発生する方法を提案し、パルス幅変調器を用いた場合より高品質な交流電流の発生を可能にしている。 離散時間フィルタをディジタルデバイスに実装するとき、量子化によるオーバーフローが問題となる。そこで、同じビット数を用いたときに、オーバーフローに頑健な実装方法を提案しその有効性をし示している。
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