研究課題/領域番号 |
16K06358
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
三木 信彦 香川大学, 工学部, 准教授 (90709247)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 5G / プロポーショナルフェアネス / 凸最適化 / スモールセル / ミリ波 |
研究実績の概要 |
平成29年度は,平成28年度の成果を拡張し,プロポーショナルフェアネス規範に基づく基地局選択時の自律制御,小型基地局の導入,及び基地局・周波数帯の選択,及び干渉制御の同時最適化法の明確化を行った.具体的には,以下の通りである. (1)基地局選択の自律制御:平成28年度は基地局が全端末の受信品質情報を既知とした条件での最適化であったが,29年度はより現実的なモデルに拡張した.すなわち,端末が複数の受信品質の良好な基地局の受信品質情報のみを基地局にフィードバックする条件で前述の最適解との特性差を確認した.様々な条件でその劣化量を確認し,最適なフィードバック情報量を明確化した. (2)小型基地局の導入:小型基地局の導入は大容量化に必須の技術であり,基地局選択の自立制御を行う際にオフロード効果を得るためにそのフィードバック信号量に大きく影響する要素である.このため,今年度導入しその影響を明確化した. (3)基地局・周波数帯の選択,及び干渉制御の同時最適化法:平成28年度に確立した基地局選択法を周波数も含めた同時最適化法に拡張した.その上で,干渉制御についても複数周波数で同時に最適化を行った.すなわち,本最適化を凸最適化問題に帰着し,その最適解を理論的に導出した.またこの最適解に収束するための収束アルゴリズムを提案し,その動作を確認した. また,平成28年度の成果も含め,国際学会,及び国内学会において積極的に発表を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は,プロポーショナルフェアネス規範に基づく基地局選択法,及び干渉制御法について,集中制御を行う場合について検討を行った.特に理論的な解の導出を行うこと,集中制御を行う際の最適解への収束の確認といった基礎的に重点を置いて検討を行った.また評価では,マクロ基地局のみを用いた構成を主に用い,様々な干渉制御法を用いた場合の効果について検討を行った. これらの結果を受けて平成29年度は,以下の3点について拡張を行った.1点目は,基地局選択を自立制御に拡張した点である.一般的な参照信号受信電力を用いて複数の接続基地局候補をフォードバックする構成である.この際,各基地局は他の基地局の情報を用いることなく制御可能である.2点目は小型基地局の導入である.小型基地局の導入は大容量化に必須の技術であり,基地局選択の自立制御を行う際にオフロード効果を得るためにそのフィードバック信号量に大きく影響する要素である.3点目は複数周波数帯への拡張である.複数周波数帯への拡張も大容量化に必須の技術である.この拡張では,干渉制御の最適化における拘束条件が単一周波数帯の場合と比較して増加する.このため,単一周波数のアルゴリズムを拡張する必要がある.本年度は複数周波数帯を用いる場合に干渉制御を同時最適化可能な収束アルゴリズムを提案し,最適解への収束の確認も行った.以上のように,5Gにおける無線リソース制御に必要な要素を考慮した最適化アルゴリズムの確立を行うことができた.
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度において,5Gにおける無線リソース制御に必要な要素を考慮した最適化アルゴリズムの基礎を確立できたと考える.平成30年度はこれを更に拡張し,5Gにおける効率的リソース制御法の確立に向けて以下の具体的な検討を行っていく予定である. まず,現状複数周波数帯を用いる場合,基地局・周波数帯の選択,及び干渉制御の同時最適化アルゴリズムには自律制御は拡張されていない.この点について拡張を行い,評価する予定である.また,複数周波数帯を用いる場合のアルゴリズムを用いた様々な条件における特性評価を推進する予定である.特に適用が期待される高周波数帯(ミリ波)の様々な条件(帯域幅,周波数,基地局密度など)について評価する予定である.これに関連して,5Gで有望とされている高周波数帯では伝搬ロスが大きく,Massive MIMO技術の適用が不可欠であると言われている.Massive MIMOを用いることで伝搬ロスの影響は軽減されるものの,その指向性は鋭くなるため,適切なビーム選択がMassive MIMOの特性に大きく影響すると考えられる.これらに影響を評価し,複数周波数帯,特に,ミリ波を用いる場合の評価を行うため,本アルゴリズムをビーム選択に拡張し,これらの影響について評価していく予定である.また対外発表も積極的に推進していく予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
国際会議に2回参加したが,連続する日程であり,旅費のコストを低減できた.ただその額は多くなく,最終年度の旅費に充てる予定である.
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