本研究の目的は,信号処理技術の多次元化を通じて三次元メッシュ電子透かし技術の発展を図ることにより,コンテンツ保護技術である電子透かしの高性能化・高機能化を実現することである. この目的を達成するために,本年度は以下の3種の研究に取り組んだ.本年度の主な成果は以下の通りである. 1)近接頂点情報を考慮したヒストグラム操作による三次元メッシュ電子透かし法の研究開発:三次元モデルの著作権を保護する透かし情報をヒストグラムの形状を変化させることにより埋め込む方法に,近接頂点との関係から埋め込んだ透かし情報を目立たさせない埋め込み手法を提案した.本提案により,パラメータを調整することにより透かし情報の挿入による画質劣化を低減できることを明らかにした.その研究成果をまとめた論文を国際会議にて発表した. 2)倍密度デュアルツリーウェーブレット変換による画像電子透かし法の研究開発:非最大間引きフィルタバンクに相当する倍密度デュアルツリーウェーブレット変換によりサブバンド数を増加させた変換領域で透かし情報を埋め込む手法を提案した.本提案により,透かし情報の挿入による画質劣化度合いを変化させずに透かし情報の検出割合を向上することを明らかにした.その研究成果をまとめた論文を国際会議にて発表した. 3)隣接行列を用いたグラフ信号処理によるグラフ電子透かし法の研究開発:ラプラシアン行列の代わりに隣接行列を用いたグラフ信号処理に基づくスペクトル拡散処理によるグラフ電子透かし手法を提案した.本提案により,情報劣化を抑制しながら,十分な透かし情報の検出性能が得られることを明らかにした.その研究成果をまとめた論文を国際会議にて発表した.
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