研究課題/領域番号 |
16K06361
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
常田 明夫 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 准教授 (40274493)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | カオス理論 / CDMA / フィードバックシフトレジスタ / スペクトル拡散符号 / 負相関 / 直交符号 / 可視光通信 / 超音波測位 |
研究実績の概要 |
本研究は,近年のネットワーク社会において,生活の利便性をさらに向上させる近距離通信(可視光通信・超音波測位)へ応用可能な通信用符号の設計に関するもので,(1) 1次元非線形カオス写像に基づいた各種符号設計,(2) 線形/非線形フィードバックシフトレジスタ(LFSR/NFSR)による実現と符号の性能評価,(3) CDMA技術を利用した可視光通信・超音波測位への応用,について検討を行ない,カオス理論に基づいて設計された符号の特性解析,およびCDMA技術を利用した可視光通信・超音波測位などの近距離通信技術に有用な符号生成器の実現を目的としている.平成28年度は以下の研究成果が得られた. ●符号設計と評価 これまでに,1つのM系列から30個の2値関数(論理関数)を用いることで,CDMA通信に有用な30種類の負相関系列を生成可能であることを明らかにした.この30個の2値関数はM系列を生成するLFSRの上位4ビットを用いて4入力1出力の論理関数として構成される.これらはGold 系列やNFSRにも応用可能である.さらに多くの負相関系列を生成できるかどうかをカオス理論に基づいて検討したところ、合計396個の2値関数が存在することを明らかにした. ●可視光通信シミュレーション NFSRから生成される負相関直交系列を用いて,CDMA技術を利用した可視光通信のシミュレーションを行った.ここで, 一人のユーザが複数のスペクトル拡散符号を用いて, 同時に複数の情報ビットを送信する方式として,通常のCDMA多重方式とM-ary多重方式の2つの方式について検討した.その結果,同時ユーザ数によって,両方式の優劣が変わることを確認するとともに,両方式において,負相関をもち,かつ互いに直交したスペクトル拡散符号を用いた方が,他の符号よりも低いビット誤り率を達成できることを明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定では,符号生成器実装を行う予定であったが,4月の熊本地震の影響もあり,その準備段階までとなった.しかし,その他は順調に進んでおり,符号生成器実装も平成29年度内に可能な状況であることから「やや遅れている」と自己評価する.
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今後の研究の推進方策 |
28年度の研究成果を踏まえ,当初予定していた以下の研究を進めていく. ●符号設計・可視光通信シミュレーション:28年度の研究結果により,負相関直交系列が有効であることが明らかになったので,そのような符号を多数設計することを試みる.また得られた符号を用いて可視光通信のシミュレーションを行い,その有効性を検証する. ●可視光通信実験:良好な結果が得られた符号生成器をFPGAボードに実装し,LED(送信機)とフォトダイオード(受信機)を用いた可視光通信の簡易実験を行い,性能を評価する. ●超音波測位に関する研究:超音波を利用した測位システムにおいて有用なスペクトル拡散符号について検討を行なう.
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次年度使用額が生じた理由 |
符号生成器実装のためのFPGAボードを購入する予定であったが,熊本地震の影響もあり,その準備段階までとなったため,その分の予算が次年度に繰り越された.また,学会出張費も予定より少なかったため,その分の予算が繰り越された.
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次年度使用額の使用計画 |
前年度購入できなかったFPGAボードを購入予定である.また,研究成果次第ではあるが,学会発表や論文執筆も積極的に行なっていく.
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