研究課題/領域番号 |
16K06364
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研究機関 | 青森大学 |
研究代表者 |
中田 和一 青森大学, 薬学部, 教授 (00244898)
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研究分担者 |
田嶋 裕久 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所, 電子航法研究所, 研究員 (10392763)
本田 純一 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所, 電子航法研究所, 研究員 (10643348)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ローカライザシステム / FDTD法 / 幾何光学回折理論 / モーメント法 / 物理光学法 / スケールモデル |
研究実績の概要 |
国内空港のローカライザ用アンテナであるLPDA(対数周期アンテナ)を素子アンテナとする、X(9.6GHz)帯アレイアンテナのスケー ルモデルの試作が完了した。マイクロストリップ基板型のLPDAの設計を行った結果、FDTD(有限差分時間領域法)による数値計算によって、単体利得10.6(dBi)、垂直面半値幅68度、水平面半値幅50度、F/B比が約18(dB)の放射指向特性が得られることが確認された。この設計に基づいて試作したLPDAは、単体入力反射特性がVSWR=1.2以下となる測定結果が得られ、また数値解析結果とほぼ一致する周波数特性となった。給電部回路の構成上、8素子型アレイアンテナとし、海上設置を想定したスケールモデル架台(カウンターポイズ)上に配置し、架台高と接地面の面積を可変可能となっている。数値解析では、等位相等振幅給電時の水平特性では、ディレクショナル系で約8度のビーム半値幅が得られることが確認されている。 試作スケールモデルアンテナの諸特性測定実験(アレイ給電比を最適化した後、ディレクショナル系、サイドバンド系の垂直面・水平指向特性の変化をカウンターポイズの面積を変えて測定)を平成29年度内に行う予定であったが、電子航法研究所の大型電波暗室を借用できるスケジュールの都合で、次年度前半の日程に延期することとなった。実験では、並行して、モデルアレイアンテナに給電する変調送信機の調整と、これを用いた方位方向DDM(Difference in Depth of Modulation)の特性測定も実施する予定である。カウンターポイズが放射特性に及ぼす影響については、一様回折理論および物理光学法に依る解析プログラムが完成しており、この解析結果と上記実験の結果を比較、考察することが喫緊の課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
昨年度、ローカライザーからの放射界、構造物のよる散乱界の数値計算用に開発を進めた幾何光学法(GTD、UTD)、モーメント法(MoM)、物理光学法(PO)に基づく汎用プログラムを保管するデータベースサーバの障害で、一部消失したプログラムの再構築に時間を費やし進捗が遅れた。本年度は、海上設置型のスケールモデルアンテナ(X帯)の開発と試作を完了させたが、大型電波暗室の利用日程調整の問題で、さらに次年度前半の作業として実験を延期することとなった。そのため、モデルアンテナ特性の評価実験が未完了となり、引き続いて年度内に予定されていた防潮堤による航空機進入コースへの影響を検討するモデル実験に到達できなかった。並行して作業を行っている構造物による散乱界がDDM特性に与える影響を解析するプログラムについては、物理光学法と一様回折理論に基づく手法がほぼ確立しているので、早期に実験に着手のうえ測定結果と解析結果の比較を行うことを予定している。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度前半には、試作した海上設置型スケールモデルアンテナの諸特性(放射特性、DDM特性)の測定評価を行い、後半には、防潮堤、大型航空機(主に垂直尾翼の影響)による散乱波が進入コース上のDDM特性に与える影響について測定評価を行う予定である。前半の実験は電子航法研究所の大型電波暗室で行い、後者の実験は測定距離(直線距離で50m程度)を必要とすることから青森大学の体育館を利用して実施することを想定している。従って、体育館内での実験では周囲壁面からの不要反射波の影響が予測されることから、事前の調査を行ったうえ、必要な場合は大型電波暗室での作業ができる実験内容に変更される可能性もある。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、実験用スケールモデルアンテナの製作やローカライザ送受信機の改修部品の購入などで直接経費を使用した。計画では、電子航法研究所の電波暗室で実験を行う予定であったが次年度に行うこととなり、実験のための資材運搬費や旅費の他、一部、DDM受信系システム(移動型2次元アンテナ移動架台等)の試作部材費用が未使用となった。また、予定した実験の評価結果に応じて、防潮堤、大型構造物などの散乱体の設計・試作に入る予定であったが、実験の延期により部材購入の費用が未使用となった。繰り越された予算は、次年度前半および後半に二回にわけて予定しているスケールアンテナモデルの特性測定実験および進入コースでのDDM計測の実験実施のための資材運搬費、旅費、部材購入費に使用する予定である。
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