研究課題/領域番号 |
16K06366
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
眞田 幸俊 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (90293042)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 非直交多元接続 / 統合復調 / ヘテロジニアスネットワーク / 干渉除去 |
研究実績の概要 |
本研究は第5世代移動通信システムのための非直交多元接続を検討する.従来の非直交多元接続では,基地局近傍端末のみ他端末用信号を除去し希望信号を取り出していた.本研究ではすべての端末が信号除去回路を実装すると想定し,ヘテロジニアスネットワークにおける非直交多元接続を検討する.具体的には①端末の要求に対応する低遅延量・低演算量復調処理方式の提案,②すべての端末で他端末用信号除去処理を行った場合のスループット特性の評価,③マクロセル+マイクロセル環境を想定しマクロセルのセルエッジ端末が増加した場合の特性評価をシミュレーションおよび実験で評価する. 平成27年度は以下の研究を実施した.(1)端末用低演算量干渉信号除去方式を提案し,端末における受信特性を,シミュレーションにより評価した.この結果1dB程度の特性劣化はあるものの提案方式は計算量を1/4に低減することが明らかになった.(2)すべての端末で他端末用信号除去処理を想定したシステムレベルのシミュレーションを構築し,ピコ基地局の位置によるシステムスループット特性の影響を評価した.この結果すべての端末に干渉信号除去処理を実装することによりシステムスループットが2倍になることが明らかになった. 以上の計算機シミュレーションと同時に,次年度以降の実験による評価を実施するため,端末用低演算量干渉信号除去方式を評価する実験系を構築した.希望信号と干渉信号を信号発生器で生成し,有線結合によりソフトウェア無線受信機に入力する構成である.ソフトウェア無線受信機はC言語を用いて提案干渉信号除去方式を実装した.次年度以降シミュレーション結果と照らし合わせながら特性評価を行う.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は当初計画では -ヘテロジニアスネットワークにおける非直交多元接続のシステムレベル計算機シミュレーションモデル -ソフトウェア無線プラットフォーム上で非直交多元接続信号を統合最尤復調するリンクレベル実験システム を構築する予定であった. システムレベルシミュレーションは当初予定通りに評価を実施し,提案方式の有効性を示した.実験システムに関してはプラットフォームの構築を終了している.今年度は実験を実施する前に計算機シミュレーションにより事前評価を行い,提案干渉信号除去方式の有効性を確認した.次年度は計算機シミュレーションと比較を行いながら実験を実施する.これにより実験結果の妥当性を確認し,同時にシミュレーションモデルに考慮していない受信周波数オフセットなどの誤差の影響を評価する予定である.
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度以降は実験システムを用いた測定を実施する.評価する項目としては,(1)非直交多重による入力信号レベルの増加の影響(2)チャネル推定誤差の影響,(3)アナログ-ディジタル変換の量子化誤差の影響を検討する.これらの誤差はマクロセル側端末用信号とマイクロセル側端末用信号を分離する際に,その分離特性に影響する.同時に計算機シミュレーションにより以下の検討を行う. ‐実験システムで評価した誤差の影響を組み込んだシステムレベルシミュレーション:非直交多元接続では電力レベルの大きい信号と小さい信号が同時に受信される.電力レベルの小さい信号に対してチャネル推定誤差や量子化誤差が存在すると,統合最尤復調後のターボ復号の際の尤度の誤差として影響する.この影響をシステムレベルのシミュレーションに組み入れ,適切な端末割り当てを行うスケジューリング法を検討する. ‐マクロセル側のパラメタ,特にMIMOの有無,ABSとの組み合わせの影響評価:マクロセル側のMIMOの有無,ABSフレームの有無が及ぼす影響を評価する.特にマクロセル側からの多元接続干渉が増加した場合のシステム全体のスループットを評価する. ‐異なる特性の端末を組み合わせた場合の特性評価:低遅延量,低演算量など要求条件の異なる受信端末を非直交多元接続に用いた場合のシステム全体のスループットを評価する.
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