研究課題/領域番号 |
16K06368
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
伊藤 登 東邦大学, 理学部, 教授 (00237041)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 線形位相 / 非線形位相 / 位相補償器 |
研究実績の概要 |
ディジタル信号処理及びディジタル通信等の分野において、もしディジタルシステムの位相特性が非線形ならば、信号処理後または信号伝送後の信号波形が歪んでしまい、信号波形の忠実度が保たれない。このような信号波形歪みを無くすため、位相補償器による位相補償が必要となる。本研究の目的は高性能・高安定性をもつ全域通過可変位相補償器を設計することである。平成29年度の研究では、全域通過型フィルタの伝達関数を用いて固定位相補償器と可変位相補償器の最適設計法を行った。本研究の最終目的は高精度・高安定性の可変位相補償器を設計することであるが、固定位相補償器の設計は可変位相補償器の設計の基礎となるため、まず固定位相補償器の設計法を開発してからその設計法を更に可変位相補償器の設計への拡張を試みる。平成29年度の研究では、主に以下の位相補償器の設計法を開発した。 1. 全域通過型位相補償器の周波数応答誤差関数に基づき、繰り返し2次錘計画法による固定位相補償器の設計を行ってから更に非線形数理計画法を導入して、2段階数理計画法による設計法を開発した。 2. 全域通過型伝達関数に基づく双線形位相誤差式を用いて線形計画法(LP)による固定位相補償器の設計法を開発した。この設計法においては、如何に非線形制約条件を線形制約条件に近似するかが重要である。 3. 全域通過型システムの周波数応答誤差式の分母を線形正関数で近似し、固定位相補償器の設計問題を2次錘計画問題の実行可能性検査問題に帰着させる設計法を開発した。 4. 分子が実関数である周波数応答誤差式を導出し、LP法による可変位相補償器の最適設計法を開発し、数値例を用いてその設計精度と安定性保証を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度の研究では、ほぼ予定通りに、全域通過型システムの周波数応答の線形分数(双線形)誤差関数式を用いて固定位相補償器のLP設計法と可変位相補償器のLP設計法を開発した。更に、全域通過型システムの周波数応答の誤差関数式(複素誤差関数式)を用いて2次錘計画による繰り返し設計法と2次錘計画問題の実行可能性検査による設計法を開発した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究においては、主に以下の幾つかのポイントを重点に置き、本研究を推進して行く。 1. 線形分数誤差関数に基づき、LP設計法の更なる改善法を開発し、固定位相補償器と可変位相補償器の精度向上を目指す。 2. 全域通過型システムの周波数応答誤差関数に基づき、新しい回転錐計画設計法を開発して固定位相補償器と可変位相補償器の更なる精度改善を図る。 3. 一般化安定三角形に基づく高安定余裕度をもつ高精度・高安定な固定位相補償器と可変位相補償器の設計法を開発する。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:国際会議の登録料が当初の予算よりやや安かったので、平成29年度の助成金は予定より少し残っている。
使用計画:平成29年度の未使用額と平成30年度の請求額を合わせて使用し、研究計画に従って研究を進め、全域通過型固定位相補償器と全域通過型可変位相補償器の新しい設計法を開発する。また、新しい研究成果を世界に向けて積極的に情報発信を行うため、権威のあるIEEEの国際会議をはじめとする国際会議で研究成果を発表する。つまり、この研究助成を有効に活用し、高精度・高安定な全域通過型固定位相補償器と高精度・高安定な全域通過型可変位相補償器の最適設計法を開発し、世界に向けて積極的に情報発信を行う。
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