研究課題/領域番号 |
16K06371
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
中條 渉 名城大学, 理工学部, 教授 (40292289)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 可視光通信 / イメージセンサ / LED / シンボル同期 / 双方向 / マルチアクセス |
研究実績の概要 |
本研究は,イメージセンサとLEDアレイを組み合わせた送受信機を双方向で用いて,空間分割多重アクセス技術を利用した双方向マルチアクセス可視光通信技術の開発を目指す。このため,(1)シンボル同期技術,(2)双方向マルチアクセス技術,(3)空間分割多重技術,(4)直交周波数分割多重技術,(5)ちらつき防止技術を開発し,統合してイメージセンサ可視光通信の高速化を図る。 (1)フレーム画像を用いたシンボル同期技術は,フレーム画像から送信シンボルのタイミングを推定する同期方式をフレームレート120フレーム/秒のイメージセンサに適用して,オンオフキーイングで100シンボル/秒のシンボルレートを実現した。 (2)双方向マルチアクセス技術は,振幅変調2ASKで双方向のマルチアクセス可視光通信を実現した。さらに広角の双方向可視光通信を実現するために,半値全角140度の広角LEDと視野角70度のイメージセンサを用いて,送受信機の送信LEDと受信イメージセンサの送受信間アイソレーション特性をオンオフキーイングで評価した。広角LEDを用いて視野角70度にわたり十分な送受信間アイソレーション特性が得られることを明らかにし,視野角70度の範囲で双方向可視光通信を実現した。 (3)イメージセンサとLEDアレイを組み合わせた空間分割多重技術は,16素子白色LEDアレイをフレームレート120フレーム/秒のイメージセンサと組み合わせてシンボル同期方式を適用し,ビットレート1.6 kビット/秒を実現した。 (5)ちらつき防止技術は,三角波のサブキャリアを用いて振幅変調8ASKでちらつき防止を実現した。さらにサブキャリア周波数 20 Hz,シンボルレート20シンボル/秒,パーセントフリッカ0.25 %のちらつき防止条件下で,直交振幅変調16QAMでビットレート80ビット/秒を実現した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)フレーム画像を用いたシンボル同期技術は,研究実施計画どおり,フレーム画像から送信シンボルのタイミングを推定する同期方式をフレームレート120フレーム/秒のイメージセンサに適用して,オンオフキーイングで100シンボル/秒のシンボルレートを実現した。得られた成果を学術論文にとりまとめて投稿し,電子情報通信学会論文誌Bに掲載された。おおむね順調に進んでいる。 (2)双方向マルチアクセス技術は,研究実施計画どおり,振幅変調2ASKで双方向のマルチアクセス可視光通信を実現した。さらに広角の双方向可視光通信を実現するために,半値全角140度の広角LEDと視野角70度のイメージセンサを用いて,送受信機の送信LEDと受信イメージセンサの送受信間アイソレーション特性をオンオフキーイングで評価した。広角LEDを用いて視野角70度にわたり十分な送受信間アイソレーション特性が得られることを明らかにし,視野角70度の範囲で双方向可視光通信を実現した。当初の計画以上に進展している。 (3)イメージセンサとLEDアレイを組み合わせた空間分割多重技術は,研究実施計画の64素子は実現できなかったが,16素子白色LEDアレイをフレームレート120フレーム/秒のイメージセンサと組み合わせてシンボル同期方式を適用し,ビットレート1.6 kビット/秒を実現した。やや遅れている。 (4) 直交周波数分割多重技術は,30フレーム/秒のイメージセンサを用いて予備実験を行っているが,外部公表にいたっておらず,遅れている。 (5) ちらつき防止技術は,平成30年度の研究実施計画である直交振幅変調16QAMでちらつき防止を実現した。当初の計画以上に進展している。以上,(1)~(5)まで全体としてはおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
(1)フレーム画像を用いた高速のシンボル同期技術は,フレームレート240フレーム/秒のイメージセンサを入手するのが困難であるため,イメージセンサのローリングシャッターを利用してシンボル同期の高速化を図る。ローリングシャッターのラインレートはフレームレートの約100倍を実現できるため,これを利用してイメージセンサを用いてシンボルレートが数1,000シンボル/秒の高速シンボル同期が実現できることを明らかにする。 (2)双方向マルチアクセス技術では,当初の研究実施計画になかった広角の双方向マルチアクセス可視光通信をオンオフキーイングで新たに実現できたので,これを振幅変調で実現する。 (3)イメージセンサとLEDアレイを組み合わせた空間分割多重技術を研究実施計画どおり進展させるため,64素子白色LEDアレイをイメージセンサと組み合わせて,振幅変調で可視光通信を実現する。 (4)直交周波数分割多重技術を研究実施計画どおり進展させるため,先ずシングルキャリアで256QAM以上の多値変調を実現する。次に16QAM以上の多値変調を用いた直交周波数分割多重を実現する。 (5)ちらつき防止技術は,平成30年度の研究実施計画である直交振幅変調16QAMでちらつき防止を既に実現している。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度購入したイメージセンサは,市販品として容易に入手できるフレームレート120 フレーム/秒のイメージセンサを用いて実験を行うことができたため,当初計画より経費の使用を節約できたことにより未使用額が生じた。 また国際会議の参加についても,今年度は日本国内において研究課題の発表に適した国際会議が多く開催されたため,国内で開催場所の異なる3つの国際会議で発表を行ったため,当初計画より経費の使用を節約できたことにより未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は最新のスマートフォンに搭載された高性能のイメージセンサを入手し,高速のシンボル同期方式を実証する予定である。また評価を行うため36ch用のロジックアナライザを追加で1台導入する予定である。また海外で開催される国際会議で研究成果の発表を積極的に行い,未使用額をこれらの経費に充てることとしたい。
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