円筒導波管の遮断TM01モードと4分割仕切り板およびリッジを装荷した遮断TE基本モードの区間を相互に周期配列した右手/左手系複合伝送線路について、前年度に明らかにした阻止域が存在しないバランス条件を満たす導波路形状を1つ定め、漏洩波アンテナ実現の可能性を詳細に検討した。具体的には円筒軸に垂直な方向に沿った長方形スリット開口を周期的に円筒導波管壁に1つ設けた場合のスリット幅、長さ、さらには設置位置に対するアンテナの放射特性、利得を数値計算により求めた。その際、製作可能であり、しかも放射特性がアンテナ構造物の影響を受けずに測定可能であることを考慮してアンテナ形状の決定を行った。そして、実際にアルミニウムを材質として12周期および30周期をもつ漏洩波アンテナを試作してアンテナ測定を実施した。その結果、数値計算結果と測定結果はおおよそ一致し、右手/左手系複合伝送線路アンテナの特長である周波数掃引によるアンテナ軸前方から後方へのビーム掃引が実験的にも検証され、本研究で提案するアンテナ動作の妥当性が示された。また、昨年度に引き続き、右手/左手系複合伝送線路の構成を方形導波管に適用した場合についても新たに提案した。昨年度の方形導波管の遮断TEと遮断TMモードによる構成とは異なり、平面積層左手系媒質を方形導波管に周期的に装荷した構造をもつ。これは2層誘電体の各層に任意形状導体パッチを配したもので、積層部分が左手系媒質となるよう遺伝的アルゴリズムによる最適化によりパッチ形状を求めたものである。この構成についても導体壁にスリットを設けることにより漏洩波アンテナとして動作することを数値的、実験的に検証した。さらに入出力線路と右手/左手系複合伝送線路との整合が実用上問題となることから、スタブを装荷した整合回路について平面回路右手/左手系複合伝送線路線路の場合を取り上げ検討を行った。
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