研究実績の概要 |
無線通信の物理層のセキュリティ方式と符号化を用いた秘密分散方式の従来研究を詳細に調査,解析し,それらを応用した無線通信システムにおける情報保護の強化方式を開発することを研究目的としている.当年度は主として,以下の項目で成果を得た. (1) 無線環境のパケット通信において,通信エリア内に正規の受信者である端末以外に非正規の受信者である盗聴端末が存在すると,盗聴端末への情報漏えいが発生する可能性があり,これに対処するための情報データの暗号化が必須となる.本研究では,暗号化における暗号化鍵を(k,n)しきい値法の秘密分散によりn個のシェアと呼ばれる分散情報に変換し,シェアを送信者から受信者に配信する.特に,当研究グループが開発した組織リードソロモン符号に基づく秘密分散方式を用いると,k-1個のシェアは,秘密情報とは独立した乱数に設定可能であるため,これらのいくつかを送信者と正規の受信者の間で事前共有すると,事前共有したシェアの送信は不要となることに着目し,秘密分散の設定に対応して,正規の受信者が暗号化鍵を再構成するために必要な受信シェア数の条件と,非正規の受信者が暗号化鍵を再構成するために必要な受信シェア数の条件の各々に応じた物理層のセキュリティの要求条件を導出した, (2) 本研究のまとめとして,電子情報通信学会からの依頼により,解説論文(``秘密分散と物理層の信号処理を用いた無線通信の情報保護方式,'' IEICE Fundamentals Review, Vol.12, No.2, 2018年10月) を執筆し,また,同学会からの依頼により,招待講演(``秘密分散と物理層の信号処理により情報保護を強化した無線通信方式,'' 電子情報通信学会 技術研究報告, IT2018-50, 2019年1月) を行なった.
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