研究課題/領域番号 |
16K06378
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
高橋 貞幸 山形大学, 地域教育文化学部, 技術専門職員 (10396559)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 圧電高分子 / P(VDF/TrFE) / 超音波トランスデューサ / MHz帯域 / 透過画像形成 |
研究実績の概要 |
本研究は圧電高分子材料中で最も電気機械結合係数(kt)の大きいP(VDF/TrFE)25/75mol%を用いて、この溶液を直接基板に塗布し、接着剤によるエネルギーロスのない凹面型の超音波トランスデューサを開発し、非接触による2MHzでの透過法により、高分解能の空中超音波画像を形成することを主幹とし、本年度は以下の項目にコンセプトを設定した。 重点事項、①溶液の直接展開法による、P(VDF/TrFE)圧電膜が、基板(バッキングプレート)から剥離しない凹面型P(VDF/TrFE)圧電振動子の製作技術を確立する。②、前述①で製作した凹面型振動子から、60dB代の高効率凹面型トランスデューサの開発を目指す。③、前述②に於いて製作した、凹面型トランスデューサにより、透過画像の予備実験を行う。 [研究成果について] 本年度は、上述①の直接展開法による凹面型P(VDF/TrFE)圧電振動子(フィルムの厚みは約300ミクロン)の製作技術を確立することができた(この厚みの圧電膜がバッキングプレートから剥離することは、ほとんどない)。②厚みのあるP(VDF/TrFE)の場合は、結晶の配向にまだバラツキがあり、高効率(60dB代)トランスデューサに未到達であるが、高電場での分極操作により、kt値の上昇が可能であることを見出した。③本年度開発した凹面型P(VDF/TrFE)トランスデューサを用いて、送受信分離型透過法により、集積回路(IC-厚み1.5mm)の透過画像を行った。この結果、チップの部分の検出に成功した。
引き続き、高効率のP(VDF/TrFE)トランスデューサの開発と画像形成システムの改良を行い、次年度は、本格的な透過画像の分解能向上を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、圧電高分子材料[P(VDF/TrFE)(75/25mol%]溶液を、基板上に直接展開法により実施し、基板から剥離しない凹面型のP(VDF/TrFE)(厚み約300ミクロン)圧電振動子の製作技術の確立を主目的とした(駆動中津周波数は2MHz)。その実施結果、殆ど基板(銅板)から剥離のしない圧電振動子の製法を確立した。この圧電振動子による凹面型P(VDF/TrFE)トランスデューサの開口角は、0~90度であり、透過用のトランスデューサの開口角度を網羅することができる。本年度は、目的とする60dB代の高効率トランスデューサの完成には、未だ、結晶配向の操作技術を確立していないため、現時点で開発中の凹面型P(VDF/TrFE)トランスデューサ(70dB)を用いて、集積回路(24×24・厚み1.5mm)を、既存の超音波透過画像システムを用いて、2MHzでの透過画像形成を試みた。その結果、IC内部のチップ部の検出に成功した。このとき用いた、送受信分離型のP(VDF/TrFE)トランスデューサは、双方とも開口角84°、焦点距離は15mmである。 現時点で、本年度の所期の目的は、ほぼ達成している。これらの結果から、今年度の研究課題の進捗状況を、おおむね順調に進展している、と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後(次年度)の本研究の推進方策として ① 送信用回路と送信用TD との整合性が不十分であり、伝送効率が悪い。このため、インピーダンス整合を行い、超音波システム回路を改善する。また、電源や接続ケーブルからのノイズの低減を図る。 ② 現在の透過波システムにより検出された透過信号の処理に、未だ時間を要するため、引き続き、高効率トランスデューサを開発し、S/N 比の改善を行う(60dB代のトランスデューサを目指す)。さらに、画像形成時間の短縮のため、受信波を高速A/D変換が可能な数V程度まで、増幅率を上昇させる(現時点では、数mVの電圧で画像を形成している。) ③ 送信波に周波数変調やチャープ波などを採用し、低ノイズ化によるS/N比の向上を目指す。また、早期に進捗した場合は、M系列信号(送波)も試みる。 ④ 上述①~③が終了次第、本空中超音波システムに、2MHz用の位相回路を組み込むことにより、高解像度透過画像形成を行う。
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