研究課題/領域番号 |
16K06379
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
伊藤 聡志 宇都宮大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80261816)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 磁気共鳴映像法 / 圧縮センシング / 高速イメージング / スパース |
研究実績の概要 |
近年,信号処理的な手法から撮像時間の短縮を目指す方法として,圧縮センシング(Compressed Sensing)のMRI応用が研究されている.本研究では,圧縮センシングの信号復元理論を組合せたMRIの超高速撮像の実現可能性について検討を行い,将来の医療福祉の改善に繋げることを目的とする. MR画像は装置誤差や組織による磁化率の相違などにより位相をもつ画像となる.そのため位相を考慮したスパース化が必要となる.本研究では,位相画像を直接的にスパース化できるeFREBAS変換を使用し,かつ,観測行列とのインコヒーレンス性を高めるために,マルチフレーム化した.すなわち,eFREBAS変換において展開するスケールを逐次変更しつつスパース化を行った.シミュレーション実験の結果,位相変化の大きな対象に対しても良好な画像を再生することができた.また,画像の振幅と位相を最適化する方法と比較しても本方法の優位性が示された.本研究の成果は,映像情報メディア学会の論文誌に掲載されている. MRIでは,プロトン密度像,T1強調像,T2強調像など組織特有のパラメータに重みを与えた撮像を行うことができる.これらの強調像に対し圧縮センシングを適用する際の再生像品質について検討を行った.その結果.強調法によって再生誤差が異なる結果となった.具体的には,T2強調像ではスパース化関数によるPSNRの差がプロトン密度像やT1強調像と比べて小さく現れた.画像の密度値に大きな変化がある画像は,スパース化への過渡的な像とみなすことができるため,スパース化関数による差が小さくなったものと考える.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は,圧縮センシングを臨床応用する際に問題となる空間的な位相変化を含んだ画像の再生問題について検討を行った.MR画像は装置誤差や組織による磁化率の相違などにより位相をもつ画像となる.我々が提案するeFREBAS変換は複素変換であり,位相画像のスパース化関数に使用可能である. [1] マルチスケール化する場合のFREBAS変換の最適なスケール係数の評価 観測行列であるフーリエ変換とスパース化関数のそれぞれの基底から計算される相互コヒーレンスの検討結果から,eFREBAS変換のスケーリング係数Dは,小さな値から使用し,少しずつ大きくしながら多くの値を使用した方が有利であることが示された.D値の数,使用数および使用順序は,画像に大きく依存しないことが示された.本方法の比較法として画像の振幅と位相を最適化する方法と比較を行った.その結果,本方法の方が位相変化に頑健であり,空間的に大きな位相変化があってもアーティファクトの少ない良好な画像を再生することが示された. [2] 撮像パラメータの異なる様々なMR画像に対する画像再生実験と評価 MRの撮像ではプロトン密度像,T1強調像,T2強調像など特徴づけを行った画像を取得できる.T2強調像ではスパース化関数によるPSNRの差がプロトン密度像やT1強調像と比べて小さく現れた.T1強調画像は解剖学的な特徴を持ち,T2強調像は髄液などのプロトンが高信号として描出される特徴を持つ.本研究で使用したT2強調画像は,脳内は低コントラストであり,プロトン密度像の輪郭を強調した一種のスパース化が進んだような画像なためスパース化が比較的容易であり,スパース性導入関数による差が現れにくくなったものと考える.以上のように位相画像に対する再構成法と撮像パラメータの異なる画像に対するスパース化の効果などを明らかにして点でおおむね順調に推移しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
[1] 位相拡散フーリエ変換法を利用した等間隔間引き収集点による画像再生 圧縮センシング応用では,一般に信号の収集軌道をランダムに間引き信号の収集数を減らす.しかし,この軌道選択の自由度が大きいために逆に軌道によって画質が大きく左右される問題がある.本研究では位相拡散フーリエ法(PSFT)の利用により,信号収集軌道にランダムに間引かずに等間隔に間引く新たな撮像について検討を行う.この方法では,信号空間の中央部を連続して間引くような方法は必要とせず.信号空間を一様に間引く形でも画像再生が可能である.信号の間引き方による再生像の画質変動を抑制することができる. [2] フーリエ変換法を利用した等間隔間引き収集点による画像再生 [1]で説明した位相拡散フーリエ変換法を利用する方法は,汎用のフーリエ変換映像法に2次の位相変調用パルスを追加する必要があり,現在のMRIで主流になっているフーリエ変換映像法そのままでは使用できない.本研究では,汎用MRIでシームレスに使用できることを考慮し,フーリエ変換映像法において等間隔間引き収集による画像再構成を考える.折り返しアーティファクトを抑制するためにMulti-scale Curvelet変換を採用し,ランダム間引き収集に比肩する画像再生を目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
計算機の価格が当初見積もりよりも廉価だったため.
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次年度使用額の使用計画 |
物品費・・・500千円,旅費・・・600千円,人件費・謝金・・・100千円,その他・・・620千円
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