研究課題/領域番号 |
16K06380
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
野村 英之 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 准教授 (90334763)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | パラメトリック超音波 / パルス圧縮 / 低周波超音波 / 合成開口 / 整相加算 |
研究実績の概要 |
低周波超音波画像システムの実現は,深達度の制限のない,広範囲な超音波画像の取得が期待される.しかしながら,弦所うにおいて低周波(長波長)であるがための指向性の問題がある.この問題を改善するため,低周波パラメトリック超音波の利用を検討する.また,パラメトリック超音波は非線形音響現象に基づくため,エコーが小さく,SNRが悪い問題がある.この問題に対し,パルス圧縮技術を適用した,低周波パラメトリック超音波画像システムの開発を進めている. 平成28年度の研究で,パラメトリック超音波の採用は低周波超音波の指向性を大きく改善させる.しかしながら,ターゲットからの散乱波の低周波であるため,ほぼ無指向性で方位分解能が予想されるより改善されないことが分かっている.平成29年度はこのタイムサイドローブを改善するために,パラメトリック超音波画像に合成開口技術を適用し,方位分解能改善を試みた. 方位分解能を評価するため,複数の真鍮棒をターゲットとし,水中にV字型になるように配置した.プローブを操作しながら変調1次超音波を放射し,伝搬とともに発生する低周波パラメトリック超音波エコーを取得した.得られた信号の位相を調整して,各信号の加算,すなわち整相加算を行うこと,音波を任意の位置に集束させた.整相加算適用前,方位方向に間隔4 cmを離して配置したターゲットの分離が困難であった.整相加算適用後はこれらのターゲットを分離することができ,方位分解能が改善される結果であった.このことは整相加算による合成開口技術が,低周波パラメトリック超音波イメージングにおいても有効であることを示す.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本手法の課題のひとつである,低周波超音波画像と高周波超音波画像の合成そのものの進捗は大きくない.その理由のひとつとして,生成された低周波パラメトリック超音波の指向性は改善されているが,エコーの指向性のために方位分解能が想定するほど改善されなかったことがある.しかし,平成29年度の研究において.この方位分解能を合成開口技術を適用することで改善できたことは,今後の研究において大きな成果である.
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今後の研究の推進方策 |
パルス圧縮処理において発生する時間サイドローブは画室を大きく損なうことが知られている.小年度はこのことを改善するため,チャープ信号波形の検討と,M系列符号の適用を行う.また,高周波超音波画像と提案している低周波パラメトリック超音波画像の深達度の評価を行う.これらの成果は国内学会や研究会,国際会議で発表していく.また,論文誌への投稿も行う. 最終的に,提案システムの評価を行い,さらなる研究への発展を検討していく.
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次年度使用額が生じた理由 |
深達度評価を行う予定であったが,実験途中で装置が故障し,その実験を行うことができなかった. 平成29年度の残予算と平成30年度予算を合わせ,これらの実験を行うための材料費等として使用する.
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