低周波超音波画像システムの実現は,深達度の制限のない,広範囲な超音波画像の取得が期待される.しかしながら,低周波(長波長)であるための指向性の問題がある.この問題を改善するため,低周波パラメトリック超音波の利用を検討する.また,パラメトリック超音波は非線形音響現象に基づくため,エコー振幅が小さくSNRが低い問題がある.この問題に対し,パルス圧縮技術を適用した低周波パラメトリック超音波画像システムの開発を進めている. 平成28年度の研究では,パラメトリック超音波の採用は低周波超音波の指向性を大きく改善させることを示した,しかしながら,ターゲットからの散乱波が低周波であるため,ほぼ無指向性で方位分解能が予想されるより改善されないことが分かった. 平成29年度はパラメトリック超音波画像に合成開口技術を適用し,方位分解能改善を試みた.水中にV字型になるように配置したターゲットの画像化を行った.整相加算適用後はこれらのターゲットを分離することができ,方位分解能が改善される結果になった. 平成30年度は,提案手法である低周波パラメトリック超音波映像法と,通常用いられる高周波超音波映像法,及び同じ周波数の直接放射低周波超音波映像法の比較検討を行った.その結果,提案法は高周波超音波法に比べ,重なりあった物体の画像化の可能性を示した.また,アクリル板を対象として,音波の減衰についても評価を行った.その結果,提案手法は高周波法に比べ,吸収が少ない,すなわち深達度の改善が見込まれる結果を示した. これらの結果から,提案したパラメトリック超音波を利用した低周波超音波画像法は,従来の高周波画像法とは異なる特徴を持ち,その有用性が示されたといえる.
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