平成28年度に検討した,TDOA(Time Difference Of Arrival)をベースとしたカルマンフィルタによる位置推定手法からの拡張として,RSSI(Received Signal Strength Indicator)や円形アレーアンテナを用いた位置推定・方向推定手法について検討を行った. まず,簡易な送受信機の構成モデルとして,RSSI(Received Signal Strength Indicator)による観測電力値をもとに,カルマンフィルタモデルを適用することで位置推定を行うシステムを実装し,その推定性能を評価した.RSSI受信信号レベルによる情報の取捨選択が重要であることを示したうえで,カルマンフィルタにおけるパラメータ設定法を検討した.さらに,本手法は屋内での位置推定にも有用であることを実証した. また,円形アレーアンテナにおけるアレー拡張処理手法として,NSCA(Nested Sparse Circular Array)とその信号拡張処理技術を考案し,その到来方向推定性能を評価した.円上のみならず,円領域内部にも仮想アンテナ素子を配置させることが可能であり,広帯域信号への応用も可能であることを示した.今後は本推定手法の演算量の低減,さらに5G応用を見据えた仮想矩形アレーの合成などを検討したい. さらに,他分野への応用も視野に入れて,FMCW-MIMOレーダによる位置推定手法の検討を行った.従来,高精度推定が可能とされてきたKR(Khatri-Rao)積拡張による手法が,近接波源の分離においては既存手法よりも低い分離性能となることを実証した.今後はこうした場面における推定精度の向上を目指したい.
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