研究課題/領域番号 |
16K06389
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
和田 健司 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40240543)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 光ファイバーセンサー / 温度センサー / 半導体レーザー / ピコ秒光パルス / 相互相関計測 / 位相雑音 |
研究実績の概要 |
本研究では,温度変化に伴って変動する光ファイバーの光学長を精密に測定することにより,高分解能な温度センサーの実現をめざした.初年度は,中心波長1550 nmの利得変調した分布帰還型(DFB)レーザーと単一モード光ファイバーを接続した簡易な構造の温度センシングシステムを構築し,2 km長のハイトレル被覆光ファイバーを温度センサーとして用いた場合には1.6×10^-4 ℃の温度分解能が達成されることを確認した.2年目には,ピコ秒半導体レーザー光源の時間ジッターと温度分解能の関係を数値的,実験的に詳細に調べ,時間ジッターの抑制により温度分解能が20 %程度向上することを実証した.また,安価なファブリーペロー型(FP)半導体レーザーを用いた場合も,DFBレーザーと同等な温度分解能が実現できることを実験的に示した. 研究期間の最終年度では,本手法の原理である位相雑音強度の変動により相互相関波形が取得できることについて,数値的に説明することから始めた.実験では,温度センシングシステムの最適化を進め,センサー部の応答時間を考慮し,ボビン一巻きに相当する70 mの光ファイバー長をセンサー長に設定した.このシステムにおいて,光ファイバーセンサー内で光パルスを3回往復させることにより,4.5×10^-4 ℃の温度分解能が達成されることを確認した.構築したシステムを用いて,20 Lの水中に1~4 gの氷片を投入した際の温度変化を調べた結果,予測される10^-3~10^-2 ℃に対応する光ファイバー光路長の変化を実測した.また,同システムを用いて,実験室内の温度変化を長時間計測した結果,測定間隔40秒において平均1×10^-3 ℃の温度変動が生じることを見積もった.この妥当性は,測定データ(光ファイバー光路長の変動)をフーリエ変換した強度スペクトルが周波数の2乗分の1に沿うことにより確認された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
氷片を投入する実験において,2台の光源(1310, 1550 nm)を用意し,光ファイバーセンサー内で光パルスの往復回数が異なる条件(前者は1回,後者は3回)で同時測定を行った.その結果,光ファイバーセンサー光路長に比例して温度分解能が向上することが確認された.しかし,その際,光ファイバーの接続箇所が増えたことにより,反射点が多くなり,2波長測定において,いずれかの結果が反射パルスにもとづくノイズの影響を受けてしまい,研究期間内に同時測定における両者の比較を行うことができなかった.また,温度上昇時と降下時の光ファイバーセンサーにおける熱ヒステリシスの影響について,現象は確認したものの,定量的な調査を行うには至らなかった.
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今後の研究の推進方策 |
問題となった光ファイバー接続の反射点を減らすために,一部光ファイバー融着を施す予定である.また,融着できない個所からの反射成分については,半導体レーザー光源や光ファイバー光路長の条件を調整し,反射パルスにもとづくノイズの影響を抑制し,前年度に行った同時測定実験を再度行う.このシステム変更を行った上で,光ファイバーセンサーの熱ヒステリシスの影響について,定量的に調査する.
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次年度使用額が生じた理由 |
光ファイバーセンサー内の光パルスの往復回数を増加することにより温度分解能の向上を図る一連の実験を行っているが,光ファイバー接続位置から予期せぬ光パルスの反射が発生し,これにもとづく雑音に起因してデータ間の比較が行えない状況が生じた.原因は特定したが対応に時間を要するため,補助事業期間の延長をお願いし,再実験を行い,雑音除去されたデータを用いて研究成果をまとめ,論文投稿を行いたいと考える.論文投稿料として次年度使用予定額を申請する.
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